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第八十七話

 凛くんがひらひらスカートを揺らして、わざわざ僕のテーブルまでやって来た。しゃがんだ拍子に下着が見えそうで、こっちの心臓がやたら忙しい。 「いやー♪初日から思ってたけど、やっぱり 愁ちゃんとじゃなきゃ、この数はむりって思って、忙しい今の時間帯だけ手伝ってってお願いしたんだけど……どう? 葵ち……お客様、気に入ってくれた?」 「ど、どう……って……」 ……正直に言えば最高だった。  他の男の子たちより少し背が高い愁くんが、 あのフリフリ付きのミニスカートを履いた姿。 眩しいくらいの白い太ももが絶対領域としてキラキラ存在してるし、顔だって薄くメイクされて、桜の花びらみたいな色の唇が信じられないくらい可愛いかった……。  それに、今のスカートが捲れそうになるのを慌てて押さえて、もじもじ脚をすり合わせる仕草も可愛い……頬を赤くしながら接客している姿も…… たまらない。 たまらないけど……同時に 「なんで僕の愁くんがみんなに見られてるのさ!!」って許せなくて……スマホを構えて パシャパシャ怒りのシャッターを、また切ってしまった。 「ぁ……ダメだよお客様、写真は禁止……」 「はぅ……ケチ……」 ふくれっ面の僕の耳に、凛くんがこっそり囁いてくる。 「だいじょうぶ……カーテンの向こうで……もっと凄いの撮れたから……葵ちゃんにも、あとで送ってあげるね……♡」 「ほ……ほんと……?」 ……あぁ……凛くん……♡♡♡ 君はなんて良い子なんだ!ほんとに弟みたいで 可愛くて、可愛くて、ずっーと愛しいと思ってたんだ。今度、美味しいチョコレートをたっくさんたっくさん買ってあげるからねッ♡♡♡ ***  そして昼の時間帯、「乙メン♡カフェ」は怒涛の大盛況。 だって料理も美味しいし、何より可愛い男の子メイドたちが接客してくれる。 そこに愁くんまで参戦したんだから、他の子たちも一生懸命働いてたけど、とにかく凛くんと 愁くんのコンビネーションは別格。普段の 「日向」でのコンビが、そのまま文化祭に降臨した感じで、まさにプロって雰囲気。 お客さんが溢れるのも当然。窓の外には噂を聞きつけた生徒たちが、ガラスを割らんばかりに張り付いてたし……。 僕はただ、その姿に見惚れてしまうしかなかった。  手伝おうかな、と一瞬思ったけど……どうやら 条件は「メイド服を着ること」らしくて。 「えー、葵ちゃんなら絶対エロいから似合うのにー」って凛くんに言われたけど…… 僕の年齢でメイド服はさすがに、いろいろアウトだと思う。 *** そして、あっという間に時間は過ぎた。 昼過ぎにはカフェは閉店。 食材も全部使い切っちゃったらしい…… ほんとにすごい。 「ふぅ……終わりました……」 愁くんは僕の前で、窓の視線を避けるように しゃがみ込む。さっきまでの喧噪から解放されて、ちょっとお疲れ顔が、また可愛ぃ……。 凛くんは他の子と一緒に、別のクラスの模擬店を手伝いに行ってしまって……だから、教室には 僕とメイド服姿の愁くんだけ。 「ぉ……お疲れ様……愁くん……」 自然と、僕の目線は愁くんのスカートの隙間へ……白い太ももの向こうにある危険な領域に 集中してしまって……。 「葵さんの……エッチ……」 「にゃ!?ち、違うよっ、そ、それに、愁くんの下着なんか……見慣れてるんだから……」 って言って、何杯目か忘れたカルピスをごくごく …… 「このクラス……こだわり派、だそうで……」 ぽつりと囁いた愁くんの一言で――僕はカルピス を盛大に吹き出した。 「ぶふッ!? ごほッ、ごほッ……っ、けほッ……ッッッ!!?」 スキニーが濡れて大惨事。愁くんはどこからか 取り出したハンカチで、僕の太ももの濡れたとこを丁寧に拭いてくれる。 「もぉ……慌て過ぎです……ふふ♪」 そう言って見上げてくる顔。赤い瞳が優しく細まって、メイクされたピンクの唇が微笑んで…… あぁ、もう……可愛すぎる……。 しかも、拭く動作の拍子に愁くんの太ももが少し開いて、ちらりと見える白い布地…… ……エッチぃ……あの中に……愁くんの……下に挟んでるの……?それとも上……収まるの……? なんて考えてたら……僕の心臓は跳ねて爆発 寸前……。 「ぁ……」 驚いたように声をもらす愁くんの視線は、 スキニーの薄い生地の下で主張して、圧迫されてる熱へ向けられて…… 「ゃ……これも、ち、違うの、これは……!」 「なにが違うんです……こんなにして……」 頬を真っ赤に染めながらも、イタズラっぽく僕の太ももを撫でる愁くん。レースの手袋越しの指先が、ぞわっと這い上がってくる感触に、頭がくらくらする。 「ぁ……愁くん……こら……ぁ……」 「葵さん……可愛ぃ……♡」 まるで天使みたいに愛らしい声なのに、指先は 悪魔みたいで――布越しにカリカリと先端を刺激してくる。 「ゃ……あっ……だめ……ッ」 「だめですか……? でもとっても苦しそうだから……ご主人様のここ、楽にしてあげようと思いましたのに……」 「ご主人様」なんて、このタイミングで言うの、ズルぃ……! 「どうしてほしいですかぁ……?」 カリカリが止まらなくて、腰が勝手に浮いちゃう。細まる赤い瞳、薄く開いた唇…… お願いだから、その唇で…… 「ぁ……して……愁くんの、……」 と言いかけた瞬間―― 廊下から響く凛くんたちの声。 ……現実に引き戻される音……。

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