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第百十二話 18禁
京之介は、至福の時間を噛みしめていた。
最愛の愁の手料理を、お腹いっぱいに、胸いっぱいに堪能できただけでなく、こうしてソファの前に腰を下ろし、愁の太ももに頬を寄せてくつろげるなんて――。
これ以上の幸せが、この世にあるだろうか。
「んふふ……♪」
喉の奥から自然とこぼれる笑み。愁の体温が頬へと伝わってくるだけで、心がじんわり溶けてしまうようだった。
大画面の中では物語が佳境を迎え、アクションの連続に思わず目を奪われる。1人なら映画なんて見ない京之介は、夢中で画面を追っていた。
そして、ふと気づいた。
ソファの上で、凛と葵がそれぞれ肘置きを枕に、小さな子猫のように眠り込んでいることに。
「ふふ……見てみぃ、子猫ちゃんがふたり寝とるわ……♪」
幸せそうな寝息に、京之介は目を細めた。
きっと、愁が作った料理に心も体も満たされて、力尽きたのだろう。
「ん……愁……?」
そう声を掛けた矢先――愁の身体がふわりと傾いた。
「っ……!」
危うくソファから落ちそうになる愁を、京之介は慌てて立ち上がり、その細い身体をしっかりと受け止めた。
柔らかな重みが腕に収まり、ふわふわとした息遣いが頬をくすぐる。淡く甘い香りが漂って、
どうやら愁まで少しふわついているらしい。
「危ないやないの……」
囁いた声は、自分でも驚くほど優しかった。
まるで恋人を気遣う響きそのものだった。
愁は小さく瞬きをして、とろんとした赤い瞳で
京之介を見上げる。その一瞥だけで、胸の奥が
ちりちりと焼けつくように熱くなる。
「……京之介さん、ごめんな、さぃ……」
「ええんよ……んふふ……♪……こんなんも……」
そう言いかけたとき、愁の指先がそっと京之介の頬を撫でた。
「こうしてると……落ち着きますね……ふふ♪」
「ッ……!!」
愁の傷も癒え。葵も、凛も寝落ち。
そして、ふたりきり……。
堪えていたものが簡単に決壊する。
愁を支えていた腕に力がこもり、そのまま抱き寄せてしまう。
「な、なぁ……愁……うち……」
「……なんですか……?」
葵と凛の寝息も、映画の音も、もう遠い。
世界で一番大切なのは愁と凛の2人。
凛は弟の様に愛おしく、かけがえのない存在。
けれど、心の奥でただ1人だけを恋う――
今、この腕に抱かれている愁だけを、京之介は
深く愛している。
「……あんたが、好きや……ずっと、ずっと前から……」
そんな胸の奥の本音が、抑えきれずに漏れた。
ふっと微笑む愁。その笑顔を見ただけで、京之介の胸はキュン……と締め付けられ、頬が熱く染まって、頭がくらくらして……。
「……俺も、ずっーと、大好きですよ……♡」
「愁……ンッ……!?」
チュ……。
愁からの軽く触れるだけのキス。
「ふふふ……♪隙ありです、よ……京之介さん♪」
けれど、それだけで戦闘不能。
組織でも屈指の戦闘力を誇る京之介が、
「大好き」と告げられ、ただの口づけひとつで
――完全に無力になってしまい。
「……ぁ……もっと、して……もっと言って……な……」
震える声で求めれば、愁は小さく笑って
「……何回でも……」
囁いた。
愁は自分から腕を回し、ぎゅっと京之介を
抱きしめ。
「京之介さん、好き……♡だーい好き……♡ン♡」
温かな体温と共に、またひとつ、唇が重なり。
朱を帯びた髪をやさしく梳かれるたび、京之介の胸は熱に震える。
「ん……ふ……愁……うちも大好き……♡ン……ッ♡」
唇はもう離れなくて、愁の舌が甘く扉を
叩けば、京之介の薄い唇は素直に開き、とろけるような蜜音を響かせ。
ぢゅぷ……ちゅ……れろ……ちゅぶ……
優しく吸われ、そして容赦なく追いかけられ、
舌がねっとりと絡んで、蜜が絶え間なく滴り――
京之介の心も身体も蕩かしてゆく。
視界も涙で滲むほどに蕩け。ただ、愁の愛情が
流れ込んでくる。その熱に抱かれる心地よさは、すべてを溶かし去ってゆく。
「ぷ……ぁ、愁……♡もっと……んっ……ええよ……」
吐息まじりに甘える声が零れた。
その瞳には、ただ愁に抱かれたいという切実な
願いが滲んでいる。
愁は赤い瞳を細め、優しい声音で囁く。
「……京之介さん、可愛い……♡」
朱の髪を撫でられる感覚がくすぐったくて、
同時に幸せで、京之介の胸は張り裂けそうになる。皆に畏れられる自分を、こんなふうに扱ってくれるのは愁だけ……。
「ん……可愛いやなんて……そんな歳ちゃうのに……」
唇を濡らすキスが重ねられるたび、抵抗の言葉は甘い声へと変わっていく。
「……看護婦さんの姿も……似合ってましたし、
可愛いですよ……京之介さんは……♪」
囁かれた耳元から、全身が燃えるように熱く
なる。
「ぁ……あれは、さーびすや言うたやろ……もう、着ーひん……。」
京之介がすぐに、ぐずるように返すと
「そう……なんですか……着て、くれない……?」
愁はちょっとだけ拗ねた顔でじっと見上げる。
目をぱちくりさせて……その表情がどうにも
愛らしく。
「……ま、まぁ!どーしても言うなら……好きって、言うてくれたら、また……」
震える吐息に掠れた挑発めいた言葉に愁は迷いなく、にぱっと笑み、
「……好き……京之介さん……ンッ……♡」
答えを落とし、直後、唇を深く塞がれ。
舌が再び絡み、甘く吸い、蜜音がとろとろに重なり。
「ん……ちゅ……愁、ぁ……ん、くちゅ……ちゅる……♡……んぅ……♡」
濃密な愛情に包まれて、愁の掌が服越しに背中を撫でるたび、蕩けきった身体がさらなる熱に沈んで。いつの間にか京之介の方が愁を見上げていた。
「ぁッ……あぁ♡……ふ……ぁ……♡」
掌は背中から腰。そして丸みを帯びた尻へ……
「柔らかぃ……ふふ……♡」
ゆっくりと揉まれるたび、京之介の身体はビクンと震え触れられたところが全部、じんじんと
甘い痺れを残す。
「は……ぁ……ン♡……愁……も、もっと……もっと
やらしいとこも……いらて……な……♡」
掠れた声で懇願すれば、愁は悪戯っぽく笑って――
「どこも、やらしいですよ……京之介さんは……
ほら、こことか……♡」
シャツ越しに指先が胸の先端へ……かすかに触れるだけでゾクリと熱が走る。
「んあぁッ……♡そ、そこは……うち……弱ぃ……
かも……ぁ……やさしゅう……して……な……?」
「もぉ……そんな可愛いこと言われたら……♡」
愁は、爪を立て左右同時にカリカリッと
先端を擦る。
「ひぃあぁッ♡んひッ♡あッ……♡やぁッ……♡」
痺れる痛みと快感が同時に押し寄せ、口元からは甘い嬌声が止まらない。
「責めたくなっちゃいますよ……ふふ……♪」
赤い瞳で見下ろしながら、愁は楽しそうに笑い、さらに爪先でカリッ、カリッと繰り返す。
「ぁッ♡いけず……♡いけずぅ……ッ♡ふ、愁はぁ……ぁんッ♡いじめっ子やぁ……♡」
言葉とは裏腹に、京之介の口元も蕩けた笑み。
愁に乳首を責められて、心の底から喜んでいる。
愁はそれを見抜いたように、さらに執拗にシャツ越しの乳首を摘んで、捻って、愛情たっぷりに
弄ぶ。
「そういう……可愛いとこ、みんなに見せれば……もっと、友達増えますよ……♪」
「んぁ……あッ♡いらへんッ……♡愁だけ……うちが……ぁ……こないな姿……見せるのぉ……愁だけ、やぁ……ッ♡」
熱に浮かされた声で必死に答える京之介。
その瞬間――胸だけでイきかけて、息を詰まらせる。
「ひ……や、あぁッ……♡」
乳首から伝わる痺れが甘い波となって全身を
駆け巡り、京之介の身体はソファの上で小さく
跳ねた。
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