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第百二十話 18禁
泡まみれの手のまま抱き合い、額を合わせて
見つめ合うふたり。互いの吐息が混ざり合うほど近い距離で、言葉はいらなかった。
ただ、そのぬくもりだけが答えのように感じられて――。
けれど、その甘やかな空気の後ろに、すっと
影が差す。
「……んふふ♪ ええ感じになったやんかぁ……」
振り返ると、京之介が厨房の入り口に立っていた。肘を軽く抱き、いつもの艶やかな微笑みで
ふたりを眺めている。
「ぁ……京之介さん……」
葵が少し肩を跳ねさせると、京之介はゆるやかに首を振り、笑みを深めた。
「もうええ時間やし……客はみんな帰ったわ。
葵ちゃんと愁には、ゆ〜っくり二人の時間を楽しんでもらわな……♪」
軽やかに告げる声には、どこか昨夜の名残の
熱が滲んでいる。昨夜、葵のおかげで愁と愛を
交わすことができた京之介は、満足そうにふたりを見つめていた。
「せやから今日は……うちは先に帰るわ。凛と外で晩ご飯でも食べてくるさかいなぁ♪」
そう言って、ひらりと手を振る。
「……京之介さん……」
葵が少し困ったように視線を落とすと、京之介は楽しげに肩をすくめてから、声を柔らかく落とした。
「葵ちゃん……ありがと。
うち、愁と愛し合えたんは……葵ちゃんのおかげやさかい。これから、いろんな意味でよろしくなぁ……♪」
挑むようでいて、どこか兄のように愛情深い瞳。その言葉に、葵はそっと唇を噛んで――そして微笑む。
「……僕だって、京之介さんには負けませんから……」
その返事に京之介は楽しげに目を細め、笑みを
深くしてから、くるりと踵を返し。
「んふふ……ええ返事やん。そないな葵ちゃんが、愁をここまでええ男にしたんやろうなぁ♪」
最後に軽やかにひらひらと手を振りながら、
京之介は厨房を優雅に後にした。
残された愁と葵。静まり返った『日向』に、
ふたりの鼓動だけが重なり合って響いて――
片付けなんて、今のふたりにはもうどうでも
よかった。手を強く握り合ったまま、厨房の奥の扉を勢いよく開け放つ。
狭い空間にはソファと本棚、そして一枚の窓。
葵は振り返ることなく、そのカーテンを荒々しいほどの勢いで閉め切った。
外界を遮断した瞬間、ふたりを包むのは熱だけ。
「愁くん……」
「……葵さん……」
呼吸が触れ合った次の刹那、唇が重なった。
最初から、激しく、むさぼるように。
ちゅっ、ちゅぷっ……ん、くちゅ……
淫らな蜜音が、狭い休憩室に反響する。
息継ぎの合間に、互いの口からこぼれるのは、
ただひとつ。
「好き……」
「ぼくも……好き……」
「……好きです……っ」
「好き……っ、愁くん……っ」
言葉のたびに、また口づけが重なり、舌が絡み、濡れた音が響く。
キスはまるで底なし沼。終わりが見えなくて、
むしろ沈み込むたびに快楽と愛しさに溺れ。
愁の手はその頬を優しく包みながらも、唇の動きは容赦なく深く。
唇を離せばまたすぐに吸い寄せられ、舌が探り
合い、口内で熱を交わすたび、互いの喉が小さく鳴る。
「ん……すき……っ……好き……愁くん……」
「……だいすき……んっ……葵さん……ちゅ」
ぢゅる……ちゅ……れりゅ……ぢゅ……
甘い吐息と、淫らな蜜音が溶け合い、閉ざされた
休憩室は、ふたりの「好き」で満ち。
愁の手が葵の背を這い、細い腰を撫で――
さらに下へ。大きく柔らかな尻へと辿り着くと、ためらいなく両の掌でぐっと掴み、揉みしだく。
「っ……ふ、ぁ……!」
葵の口から、甘い吐息が漏れる。
蜜音の合間に小さな喘ぎが重なり、部屋の空気はますます熱を帯び。
唇をいったん離した葵は、赤らんだ頬で愁を見上げた。
「……どんだけ……僕のお尻、好きなんだよ……!」
ふっと照れ隠しの笑みを浮かべると、愁は真剣な目で答えを紡ぐ。
「……柔らかーい、お餅みたいなとこも……
形も、手に収まらない大きさも好き……
最近ちょっと大きくなってきたの……嬉しくて……それに……」
「はぅッ!? ンッ!」
恥ずかしさに胸を震わせた葵は、これ以上言わせまいと、愁の唇を勢いよく奪った。
「スクイー……ンっ……んむ……ッ……」
互いの舌がすぐさま絡み合い、ねっとりと、濡れた音を響かせる。
ちゅり……くちゅ、ねゅ……淫らな蜜音は狭い休憩室を満たし、愁が尻を揉み込むたび、葵の腰の
奥が疼いて、足元が震え。
「んん……ふぁ……ん、んむぅ……っ……」
キスに塞がれた唇から、堪えきれない甘い喘ぎがこぼれ続け。舌と舌は絡み続けるうち、葵の脚
から力が抜け、支えを失った身体がふらりと
揺れ。
愁はすかさずその腰を抱きとめ、唇を離さぬまま、ゆっくりとソファへ葵を横たえた。
「ふ……ぁ……」
ソファに沈む葵の胸が、熱い息と共に上下する。
「……脱がせ、て……愁くん……」
「はい……」
返事をしながら、愁はその上に覆い被さり、指先で葵のベストのボタンを一つ、また一つと外すと
布が滑り落ち、肩から抜ける。
ネクタイをシュル……と解き、シャツのボタン。
上から順に外すたび、隠されていた白い肌が
覗き、無数の淡い……淡い傷痕が浮かび上がり。
葵は、ほんの一瞬、目を伏せる。
「……きれい……ちょっとずつ、薄くなってきて……ますます……」
呟く愁の瞳には――ただ慈しむ光が宿って。
「ぇ……やっぱり……?僕も……鏡見るたび、思ってたんだけど……なんでだろ……」
「……ふふ……♪キスの力……ですよ……」
囁く声は甘く。
「ぁはは……♪まさか……んッ……♡ 」
愛おしさに堪えきれず葵の唇へ、静かなキスを落とし――
キスはやがて首筋へ移り、熱く甘い吸い付きとなって葵を痺れさせ
「ん……ぁ……っ」
声が滲む。葵の手はソファの背を掴み、身体を反らせ。唇が鎖骨をたどり、胸に残る傷跡をひとつずつ慈しむように舐め。
「あッ……ぁ……」
やがて、ぷっくりとした桃色の乳首へ辿りつくと、愁はそこを舌でゆっくり転がし、唇で吸い
立て。
指先も加え、左右を交互に、執拗に愛撫する。
「ひぁ……っ、や……ぁ、あぁっ……!」
葵の嬌声は堪えられず大きくなり、狭い休憩室に淫らに響き。
愁の唇と舌が乳首を執拗にねっとりと責め続けるうちに、葵の身体は限界を越え。
「ぁっ……あぁぁっ……!!」
突き上げるような快感に、葵の背が大きく反り返り、びくびくと痙攣する。
乳首だけで達してしまった身体は小さく震え続け、汗に濡れた肌が艶やかに輝いていた。
「はぅ……は……ぁ……乳首で……イくの……癖に……なっちゃった……ぁ……」
その反応に、言葉に愁の胸が灼けるように熱くなり。
「もっと……気持ちよくなって……葵さん……
ちゅ……」
唇は胸から離れ、柔らかな腹筋の起伏を舐め伝いながら下へ……。
「ふぁ……愁、く……んッ……」
震える腰に辿り着くと、愁は手を伸ばしベルトの金具を外した。
スラックスのジッパーを下ろし、布をゆっくりと
引き剥がす。
下着越しに浮き上がった陰茎は、布をぴったりと
濡らして形を刻んでいる。
そのあまりに淫らな姿に、愁は一瞬、息を止めて見惚れ。思わず葵の両脚を持ち上げ、恍惚とした眼差しでその姿を眺めてしまう。
「……いつ見ても、えっちぃ……」
「……っ、やだ……」
愁が呟くと葵は顔を赤らめ、震える声を洩らす。
羞恥なのか、それとも続きを求めてしまう欲なのか――
瞳に涙を滲ませながら、搾り出すように呟いた。
「脱がせるんなら……早くしてよ……はやく……して……」
甘えるように、縋るように。
その可愛さに胸を貫かれ、愁は堪えきれず喉を鳴らす。
そして――極限まで焦らすように、ゆっくりと下着を指でつまみ、音を立ててずらしていく。
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