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第6話
体育祭当日。
俺は兄ぃのクラスとは決勝までいかない限り合わない組み合わせになっていて、代わりに3回戦目で輝政のクラスと対決する事になってしまっていた。
「スゴーい!!道籠ツインズ対決なんて!!」
「輝政クン、今日もカッコイイー!!」
「私は繋くんの方がクールで好きだなぁ!!」
体育館には沢山の女の子たち。
輝政はそんな女の子たちに笑顔で手を振っていた。
「みんな〜!応援よろしくね!!」
まるでアイドルみたいだ。
「け、繋、頼むぞ」
「あ、あぁ……」
クラスメートたちもこの異様な空気に完全に呑まれている。
参ったな。
俺、こういう雰囲気で集中するの、すごく苦手なんだけど。
こんな事もあろうかと思って持ってきてた耳栓、使うしかない。
俺は試合前にトイレに行って耳栓を嵌めると、何食わぬ顔で試合に臨んだ。
「…………」
キャプテンのクラスメートがサーブ権を取り、俺からサーブする。
兄ぃと一緒に練習した、ジャンプサーブ。
けど、スポーツが得意な輝政にあっさり拾われた。
相手チームは輝政にボールを集めて輝政はそれに応えて強烈なスパイクを打ってきて、俺はチームメイトとブロックしたりしたけど全く歯が立たなかった。
そればかりか、変な体勢でボールを取ろうとしたせいで足を挫いてしまった。
「みっちーー!!」
あぁ、恥ずかしい。
輝政に勝てる訳ないのに一生懸命になり過ぎた事も、それで負傷してしまった事も。
「……保健室まで行きましょう……」
耳栓を取ってなんとか脚を引きずってコートから出ると、知らない男子生徒が駆け寄ってきて、そう言って肩を貸してくれた。
「あ……ありがとう……」
『保健委員』の腕章を付けた、俺よりも背が低いけどスポーツやってそうな体格の子。
ジャージの色から下級生だと分かり、左胸には『松若』と書かれていた。
輝政よりも鋭い目つきの彼を、俺はその綺麗な顔立ちから何故か可愛いな、と思ってしまい、心惹かれた。
俺を保健室まで連れて来てくれると、松若くんは一礼してすぐにいなくなってしまった。
……何だろう、この気持ち。
初めて会ったのに、彼の全てが俺を惹きつける。
名前、しかも苗字しか分からない彼の存在が、俺は気になって仕方なくなってしまった。
軽い捻挫だった俺は、夏休みの前半にはその怪我が落ち着いていた。
それまでずっと体育祭で出会った松若くんの事が気になって、学校での夏期講習の時、保健委員をやっている同級生につい、彼の事を聞いてしまっていた。
「あぁ、松若?バスケ部の次期エース候補らしいよ。それがどうかした?」
「いや、その、体育祭の時に保健室まで連れてってくれたからお礼が言いたいなって思って」
「へー。アイツの事怖くねーの?オレは年下だけど目つき悪いしガラ悪そうな感じで怖くて話しかけずらいからあんまり話した事ないんだよなぁ……」
「そ……そうなんだ……」
確かに、人を近づけさせないようなオーラは持っていたと思う。
でも、俺は、彼にまた会いたかった。
何とかお礼だけでも言いたい。
そう思っていたけど、俺は同じく夏期講習を受けているはずの彼に会いに行けずにいた。
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