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第7話

夏期講習も終わり、松若くんに会うこともなく夏休みが来た。 明後日に結婚相手との顔合わせを控えていたある日、それは何の前触れもなく突然起こった。 兄ぃが死んでしまったのだ。 コシンプの話によると、兄ぃはコシンプが察知したこの地域一体を襲う大地震を防ぐ為、その生命を以てそれを止め、人々を救ったのだという。 いつも、兄ぃは話していた。 この一族に生まれたからには人々の為にいつだって生命を捧げる覚悟は出来てるって。 俺にはとても信じられなかった。 一族が祈りを捧げる場所で死んでいた兄ぃの身体はどこにも傷がなく、ただ安らかに眠っているように見えた。 家に帰ってきて一族に伝わる模様が描かれた死装束を着せられた兄ぃ。 知らせを受けた輝政も家に来て、もう起きる事のない兄ぃの姿を呆然と見ていた。 「繋、輝政」 俺たちは兄ぃが寝ている部屋で、父と向かい合うように座らされていた。 「魁人がこうなってしまった以上、その代わりを決めなければならない」 父の表情は暗く、固かった。 先に逝くはずの自分よりも早く死んでしまった兄ぃの死を悼んでいるようだ。 「親父、俺にしてくれよ!俺、兄ぃみたいに頭は良くねーけど、この家の為に何でもするから!!」 「…………」 輝政が進み出て言った。 けど、父は首を縦に振らなかった。 「御頭様」 そこに、コシンプが入ってくる。 「魁人さまは御生命を捧げる前に仰っていました。自分の代わりは妖怪と人間とを区別せず接する事の出来る繋さまに務めて欲しいと」 「な……っ……!?」 「…………!!!!」 言葉が出なかった。 何で、何で俺が? 確かに妖怪と人間は俺の中で同じだけど、だからってそれだけで俺にしようと思うなんて。 「……そうだな……」 「親父、本気かよ!?確かに繋は妖怪と仲良いし俺より10日早く生まれてるけど……」 「輝政、お前が妖怪に対して不信感を抱いている事、私が知らないとでも思ったのか。道籠家は妖怪と共に生きてきた一族、それを理解していないお前に頭領など務まる訳がない」 俺が呆然としているのをよそに、ふたりはそんな言葉を交わしていた。 「繋、分かったな。魁人に代わり、お前を次期頭領とする。魁人の葬儀が終わり次第、お前にはしきたりに従い、妖怪と契りを交わしてもらう」 「ま、待ってくれよ!親父!!」 それだけ言って、父は出ていってしまい、輝政はその後を追って出ていった。

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