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第15話
それから1週間もしないうちに、結婚式の日がやってきた。
俺は兄ぃが着たという結婚の時の装束を着せられて妻となる人を待っていた。
家の別棟にある、神様を祀っている場所。
父と母、そして俺を産んでくれた母の写真と兄ぃの写真を持ったチロが臨席していた。
「お待たせ致しました」
神社の神主さんみたいな服装の男性を先頭に、巫女さんみたいな服装の髪の長い女性、そして……俺がずっと気になっていたその人が、真っ白な着物に淡いピンク色の大きな石のついたネックレスを身につけ、俯きながら歩いてきた。
……嘘だ。
こんな……こんなの……夢としか思えない。
俺はその人が俺と向かい合うように座ってもまだ信じられなかった。
「松若家当主の末妹の長子、雅美でございます。ふつつか者ですがどうぞよろしくお願い致します」
一族同士で向かい合うような形になると、男の人が言う。
「道籠家次期頭領、次男の繋です。こちらこそまだまだ未熟者の息子ですが末永くよろしくお願い致します」
父が応えて頭を下げ、俺も慌てて頭を下げる。
「雅美、良かったわね。とても素敵な方じゃない」
「…………」
松若くんに似た、凛とした目鼻立ちの女性が言う。
恐らく、お母さんなんだろう。
その言葉に、松若くんは更に俯いてしまった。
「ごめんなさいね、この子には小さい頃から花嫁修業はさせてきてたけど、こんなに早くお嫁に行くなんて思ってなかったものだから……」
「だ……大丈夫……です。それは……俺も同じなんで……」
こんな事、言っていいのか分からなかったけど、そう言いながら俺は松若くんが顔を上げてくれないかとそちらを見てしまった。
「…………」
一瞬、合った瞳。
キリッとした眉と目が、今日は少し怯えているように見えた。
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