21 / 60
第21話
朝。
俺は松若くんに起こされていた。
「すんません、朝は毎日ランニングしてるからしないと気持ち悪くて」
「いいよ、そういうのは遠慮なく言って」
「あっす」
俺の着替えを貸して、一緒に近所を走る。
少し肌寒いくらいの気温。
走っていくうちに、風が心地良く感じた。
「先輩、結構走れるんすね」
「あぁ、たまに兄ぃと走ってたんだ」
兄ぃ、今の俺を見たら何て言ってくれるだろう。
『へー!!気になってた子が嫁いできたなんて!良かったじゃないか、繋』
って、あの笑顔で言ってくれたかな。
「…………」
いつの間にか、涙が出てしまっていた。
「大丈夫すか」
「ごめん、大丈夫だから」
立ち止まって涙を拭うと、松若くんも止まってくれる。
「……お兄さんの事、聞いてます。それでオレとの結婚、早くなった事も」
「…………!!」
いきなり抱きつかれて、俺は驚きで固まっていた。
「悲しむ余裕もなかったんすよね、先輩」
「……う、うん……」
その言葉が優しくて、俺はそのまま松若くんにしがみつき、泣いてしまっていた。
そんな俺を、松若くんは黙って受け止めてくれた。
ともだちにシェアしよう!