23 / 60

第23話

「突然すみません」 「いいえ、こういうサプライズ、大歓迎よ」 松若くんがタクシーの中で連絡してくれて、俺は途中のスーパーの中にあるケーキ屋でケーキを買って松若くんの家にお邪魔していた。 家は学校の近くにあるマンションだった。 「夫は仕事でいないの。ごめんなさいね」 「いえ……」 部屋には松若くんが今まで獲得したらしいトロフィーやメダル、バスケをしている時の写真が飾られていた。 「雅美からは貴方と決めた事があるからそれを伝えに帰る……と聞いたんだけど、どんな事かしら?」 「はい、それは……」 俺は父に話したように、松若くんのお母さんに話した。 「まぁ、そんなわがまま言っていいの?普通ならもう妻として一緒に暮らしていかなければならないのに」 「僕はわがままだと思いません。僕もまだ兄が亡くなったばかりで気持ちの整理がついていませんので、そうさせて頂きたいんです」 「そう……ですか。分かりました。雅美、貴方は本当にいい方にめぐり逢えたわね」 「……はい……」 お母さんの笑顔に応える松若くん。 「繋さん、せっかくいらしたんですから、雅美の小さい頃のアルバムでもご覧になりますか?」 「母さん、そういうの、いいですから」 「じゃあ最近のバスケの試合のビデオにする?私はアルバムを見て欲しいけど」 「……お任せします……」 お母さんの前で慌てる松若くん。 可愛くて、微笑ましかった。 お母さんは俺に小さい頃の松若くんの写真をたくさん見せてくれた。 「こんなに可愛く笑ってくれてたのに、いつの間にか笑わなくなっちゃって、バスケ始めてからは目つきも悪くなっちゃって」 面影のある顔。 確かに笑顔は今の松若くんからは想像がつかなかった。 「……この方がお父さんなんですね」 「えぇ、式に来ていたのは松若家現当主の兄です。夫は婿養子だったから式に臨席出来なかったの」 家族3人で写っている写真も結構あって、どれも幸せそうに笑っているように見えた。 松若くんの家には2時間ほどお邪魔した俺はお昼ご飯を頂いて帰宅した。 「貴方なら大丈夫と信じていますが、雅美の事、どうかよろしくお願いしますね」 帰り際、お母さんは笑顔でこう言ってくれた。

ともだちにシェアしよう!