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第24話
夏休みももうすぐ終わる頃、俺の家も支援している地元の祭りが家の土地で開かれた。
普段は人気のない場所がこの時だけは賑わい、地元の人だけでなく観光客まで来ていたりする。
俺も例年通り手伝いとして駆り出される事になっていたんだけど、今年は松若くんもそこに加わる事になった。
「ごめんね、部活が休みの間、ゆっくりしたかったよね」
「……いいっすよ、別に」
週末だけ泊まるという事だったけど、松若くんは夏休みだからという事で平日も泊まりに来てくれて、ほんの少しだけど打ち解けはじめてきた。
そんな流れの中で、2日間の祭りの間も松若くんは家に寝泊まりする事になった。
チロがまた引っ掻き回さないか心配だったけど、祭りの間は妖怪たちも祭りらしく、何かあったらすぐ呼んでと言って家からいなくなっていた。
俺を護るんじゃないのかよ、って思ったけど、チロがいたら松若くんとゆっくり話も出来ないからいいか。
「…………」
初日の神輿を担ぐ日。
俺は兄ぃのお葬式以来会ってなかった輝政に会った。
「輝政……」
「……お前、バスケ部の1年と結婚したんだってな」
「そうだけど……」
輝政は俺を見るなり、不機嫌そうな顔を見せる。
俺の隣には松若くんがいて、彼の事も冷たい目で見ているような気がした。
「お前みたいなのが次期頭領なんて、俺は絶対に認めない」
「……俺だって……好きでなった訳じゃ……」
「そういう態度が余計気に入らねぇんだよ!お前なんかただちょっと早く生まれて妖怪の幼馴染がいるだけだろ!?俺に勝ってんの、勉強と身長だけのクセに!!」
輝政は俺の胸倉を掴み、怒鳴ってくる。
「……先輩に手ぇ出すの、止めてもらえませんか?」
「松若くん」
俺が無抵抗でいると、松若くんが割って入った。
「アンタと先輩の間に何があったか知らねーけど、オレはこの人の妻なんで、夫を馬鹿にされて黙って見ているなんて出来ねぇ」
「……っ……!!」
輝政を強引に俺から引き離す松若くん。
その目は今まで見た中で一番怖かった。
「クソ……っ、このままで済むと思うなよ、繋」
輝政はそう言って俺たちの前からいなくなった。
「あ、ありがとう、松若くん」
「……先輩、何であの人にやり返さないんすか?」
「うーん……やり返したらキリがないから……かな。誰かが止めればそこで争いは終わる。俺はそう思ってるんだよね」
不満そうな松若くんに俺は言った。
「……オレ、余計な事しましたか?」
「ううん、そんな事ないよ。君の気持ち、すごく嬉しかった」
あんな風に言ってもらえるなんて思わなかった。
それで俺はまた、思わず松若くんの頭を撫でてしまっていたんだ。
「あっ、ごめ……」
「……いいっす、別に……」
そんな俺に、松若くんは頬を赤くしながら言ってくれた。
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