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第29話

新学期。 チロはコシンプの代わりとして何食わぬ顔で一緒に登校した。 普通の人からは妖怪のコシンプの存在はないものになっていたけど、兄ぃはそういう訳にはいかず、始業式で夏休み中に心臓発作で亡くなり、身内だけでお葬式を済ませたという事で全校生徒に伝えられた。 「けーい、どう?ボクのセイフク姿」 「……幼稚園児みたいだな」 「もう!何だよそれ!!」 俺と同じく白いワイシャツに黒のスラックス姿のチロ。 小柄で童顔なのもあってとても上級生には見えないし、地毛で通ったらしいけどその赤い髪は大丈夫なのかと気がかりになる。 「あ、先輩」 休み時間、俺の教室前でチロと話していると、松若くんが移動中らしく通りかかる。 「おはよ〜、雅美くん!!」 「おはよう」 「…………」 俺たちに一礼して歩いていったけど、松若くんの目はチロを睨んでいた気がした。 「ふふふっ、雅美くん、かーわいいっ、ボクに敵意むき出しだったね」 「お、おいっ、そんな事大きい声で言うなって」 くすくす笑いながら話すチロに、俺は誰かに聞かれてないかと慌てる。 「あ〜そっかぁ、ヒミツなんだもんね、結婚したの。夏休み中にちょ〜っとイイ感じになれたのも」 「ち、チロ!!」 「も〜、繋、ダメじゃん、そんな風に呼んじゃ」 「お前のせい……」 そこに、輝政がやって来た。 「お、おはよう……」 「おはよー!輝政!!」 気まずかったけど、声をかける。 チロは気にせず手まで振っていた。 「……お前らの顔なんか見たくねーけど、兄ぃの代わりに生徒会とかるた部の事、決めなきゃいけねーから来た」 俺と輝政が並ぶと、周りの女の子たちが騒ぎ出す。 「きゃー!!道籠ツインズ揃ってるーー!!」 「新学期からツーショットなんてヤバすぎ〜!!」 ちょっと一緒にいるだけでこれなの、勘弁して欲しい。 「輝政、魁人の代わりやりたいんでしょ?他のみんながいいって言ってくれたらいいんじゃない?ね、繋」 「あ、あぁ……」 「……お前、妖怪の癖に人間の世界に溶け込もうとすんな」 チロが笑顔を向けると、輝政は俺たちに聞こえるくらいの声でチロに冷たく言った。 「……そんな事言ってるから跡継ぎに指名されなかったって分かってないなんて、かわいそうな子。ヒトの世界でキミはすごいヒトなのかもしれないけど、そんなんで頭領になりたいなんて笑っちゃう」 「だ、黙れ!!」 チロが輝政に近づいて背伸びし、笑いながら小声で話すと、輝政は大声を出す。 「輝政……」 「お前らは俺の言う通りにしてればいいんだ、分かったか?」 「はーい」 周りの女の子たちにフォローを入れた後、輝政はまた俺たちだけに聞こえる声で言って教室に戻っていく。 それにチロは笑顔で応えていた。 「輝政、悪い妖怪に利用されないといいけど。今のあの子、繋に対する妬みの気持ちでいっぱいだから……」 「……それ、どうにか出来ないのかよ」 「うん、自分で断ち切らない限り無理。ボクも気にするけど、繋も輝政には気をつけてね。雅美くんに何かあったら嫌でしょ?」 悪い妖怪。 そんなものが存在しているなんて知らなかった。 「……俺んちの事で松若くんに迷惑をかけるのは嫌だ」 「ん、じゃあ何かあってもいいように修行頑張ろっか、繋」 「分かった」 何も起きない事を願いながら、俺はチロから分けてもらった力の使い方を教えてもらう事にした。

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