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第36話
明日は試合だからこれ以上はと思って、それからは普通に風呂から出て寝る準備をした。
「先輩、明日、試合終わったら……今日よりいっぱい先輩とHな事……したいっす……」
寝る前、松若くんはそう言って俺にキスしてからベッドに横たわる。
「……おやすみなさい」
「お、おやすみ……」
松若くん、回を重ねる度に大胆というか、色気?いやらしさ?が増していってる気がする。
俺のせい……だよな。
い、いいのかな、これで。
けど、俺も松若くんとこういう事する度にもっと過激な事したいとか、もっと松若くんが悦ぶ姿が見たいとか思ってしまってる。
「…………」
そんな事を考えたら、少しの間眠れなかった。
翌朝。
松若くんに起こしてもらって一緒にランニングを済ませ、母親が作ってくれた朝食を食べると、一緒にバスに乗って学校まで向かった。
「頑張ってね。後で松若くんのお父さんたちと一緒に行くから」
「はい」
月並みだけどそう言ってバスターミナルで松若くんと別れると、松若くんの家に向かった。
約束の時間まで待たせてもらってご両親と一緒に学校の体育館に見に行ったんだけど、松若くんの言う通り、応援席である体育館2階のギャラリーには女の子たちがあちこちにいた。
「ね、あれ!生徒会の道籠繋くんじゃない?」
「ホントだ〜!!私服でもカッコイイ〜!!」
「今まで応援来た事なかったのにどうしたのかな?」
私服……白いTシャツに黒のショートパンツ履いてるだけなのにカッコイイって言われても。
「繋さん、女の子から人気あるんですね」
「あ、あはは、そんな事ないです……」
「誰からも慕われる人が旦那さんなんて、雅美は幸せ者ね、お父さん」
「そうだね、お母さん」
そんな俺に、松若くんのご両親は笑顔を見せてこう言ってくれた。
「おはようございまーす!!」
そこに、下級生らしい女の子たち5人のグループが来ておふたりに声をかける。
「あら、皆さん、おはようございます」
「松若くんのお母さん、お父さん、今日も一緒に応援してもいいですか?」
「えぇ、もちろんよ」
「ありがとうございまーす!!」
女の子たちは前に座ると、松若くんに声援を送った。
「松若くーん、頑張ってー!!」
練習している松若くんは集中しているのかそんな応援に対して何も反応せず、こちらを見ようともしない。
やがて試合が始まると、松若くんは最初から最後まで試合に出ていた。
初めて見た、松若くんが試合に出ている姿。
ずっと走って、背の高い選手の間を上手くすり抜けて、たくさんシュートを決めていた。
「ナイス!松若!!」
「あっす!!」
女の子たちは当然キャーキャーと大騒ぎしていて、ご両親も松若くんがシュートをしたり相手からボールを奪うと歓声を上げていた。
俺はというと、シュートを決めるその瞬間のものすごく集中した顔にすっかり見蕩れてしまっていた。
それと同時に、こんなにバスケを一生懸命やって輝いている松若くんから俺はいつかバスケを、その輝きを奪ってしまわないかと不安に駆られた。
「そういえば道籠センパイ、松若くんとお知り合いなんですか?」
「あ、あぁ、うん。実は遠い親戚なんだ。1学期は家の用事でなかなか応援に来られなかったけど、落ち着いたから今度から応援に来ようかな、って思って」
女の子に聞かれて、俺は咄嗟に嘘をつく。
「わぁ〜!!イケメンの親戚はやっぱりイケメンなんですね!!」
「い、いや、俺はそんなんじゃ……」
俺なんかじゃとても釣り合わない。
俺は、それからバスケをしている松若くんをずっと見ているうちにそう思ってしまったんだ。
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