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第41話

「繋?力の事、心配なの?」 「う、うん、まぁね……」 「…………」 帰りの車で家を燃やすのは今度の水曜日にするって言われて、そんなに時間がない事に俺はどうしようかと思ってしまっていた。 それでチロと松若くんにお願いして、兄ぃの家の近くの原っぱまでついてきてもらって、練習に付き合ってもらう事にした。 「火がちょっとでも出ればね。そしたらなんとかなるんだけど、繋は調子悪いとそれも難しいもんね」 こんなので次期頭領なんて務めていいはずがない。 一体どうしたら……。 「繋、雅美くんとはまだ交尾してないみたいだけど、交尾したら力をもう少し安定させられるかもしれないよ?」 「えっ!?」 交尾って、つまり、セックスするって事、だよな。 「そ、そういう事ならオレ、やります」 チロの言葉に、松若くんが言い出す。 「ま、待って、松若くん。俺はまだ……」 「先輩はオレとするの、嫌ですか?」 ゔっ、松若くん、ずるいよ。 そんな泣きそうな顔で迫ってきて聞いてくるなんて。 「嫌な訳ないだろう?俺だって君としたいって気持ちはあるよ。でも、まだ早いのかなって思って……」 「ふふっ、繋って本当に奥手だよね。普通なら結婚式のあとすぐに交尾しちゃうものなのにしなかったし」 「うるさい!!」 松若くんと抱き合っていると、チロが横から入ってくる。 「でも、何でしたら力が安定するようになるんすか?」 「うーん、それなんだけどね、多分、『アイノチカラ』って事なんだと思うよ〜!!」 「!!!!」 俺、その言葉に絶句する。 「……それ、本気で言ってんすか」 俺に代わって松若くんがチロに言ってくれる。 「本気だよ〜。知らないヒト同士を繋ぐのって結局ヒトの愛欲なんだと思う。ふたりだって交尾してないけど、それなりのコトはしちゃってるでしょ?そういうコトだよ」 「…………」 悔しいけど、否定出来ない。 それは松若くんも同じだったみたいで、恥ずかしそうに俯いてしまってる。 「……チロ、今日と明日試して出来たら水曜日もいける気がする。俺、この為だからって松若くんとセックスするのは嫌だ。ちゃんと自分たちが望んだ時にしたい」 しばらく考えて出した答えを、俺はチロに言った。 「ん、分かったよ、繋。一番大事なのは気持ちだと思うから頑張ってみよっか」 そんな俺を、チロは受け入れてくれた。 「先輩……」 「松若くん、俺の為に覚悟してくれてすごく嬉しかったよ。でも俺、君の事が本当に大好きだから、ちゃんとふたりでいいなって思った時にしたいんだ」 その頭を撫でながら言うと、松若くんは俯いていた顔を上げてくれた。 「……分かりました。じゃあ、とりあえず今、やってみて下さい」 「うん、分かった」 松若くんから離れると、俺は目を閉じる。 俺の中の俺。 頼むから、俺に力を。 愛する人を、愛する人と生きていくこの世界を護る力を。 俺ひとりじゃ出来ないから、力を貸して下さい。 心の中でそう念じていると、右手が熱くなっていく。 「!!」 掌いっぱいに燃えている炎。 やった。 多分、今までやった中で一番早く出たと思う。 「繋!やったね!!」 チロが笑顔で抱きついてくる。 「…………」 そんなチロを睨みつつも、松若くんは俺と目が合うと口元だけ笑ってくれた。

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