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第43話
「手……何ともないんすね」
「うん、どうしてそうなのか俺にもよく分かんないけど」
俺の火で全ては焼き尽くされ、その火は父が力を使って燃え拡がらないよう消してくれた。
その後俺たちは家に戻り、風呂に入って部屋で過ごしていた。
「先輩、すごかったっす」
「ありがとう、松若くんにそう言ってもらえるなんて嬉しいよ」
寝るのに布団も敷いてあったけど、何となく眠れなくて並んでベッドに腰掛けて言葉を交わす。
松若くんがまだ少し熱を帯びた俺の手に触れ、撫でてくれて、それが心地よかった。
「あの……オレ、相談したい事があって……」
「ん、どうしたの?」
「オレ、今週の土日は引越するのに部活休みにしたんで、先輩と……したいんですけど……」
「!!!!」
俺の指に少し震えながらその綺麗な指を絡めて発した言葉に、俺は硬直してしまう。
「い、いいの?」
「オレが聞いてんすけど」
夢かと思って聞き返すと、松若くんが頬を赤らめながらむっとした顔になる。
「ご、ごめん」
「で、どうなんすか?」
「う、うん、松若くんが大丈夫なら俺は……」
この少し迫られてる感じ、いいかも。
「じゃあ決まりっすね」
「あ、あぁ」
松若くん、気のせいじゃなかったら嬉しそうに見える。
週末まであと少し。
大丈夫かな、俺。
準備とかちゃんとしとかないと。
そんな俺の思いが聞こえていたのか、次の日の帰り、チロからプレゼントと言って渡された紙袋の中にはコンドームとローションが入っていた。
「チロ、お前ふざけるなよ!!」
「え〜、ボクふざけてなんかいないよ〜。必要じゃない」
妖怪の姿に戻ったチロが俺に迫ってくる。
「お、お前に心配されなくたってこれくらい自分で用意するし!!」
「あぁ〜、じゃあボク、余計な事しちゃったね〜ごめんねぇ〜」
ニヤニヤしながら話すチロ。
絶対、絶対俺の事バカにしてるだろ。
っていうか……。
「チロ、どうやってこれ手に入れたんだよ?」
「え〜?ヒミツ」
俺の言葉にチロはそう言って笑顔を見せたけど、その笑顔はどこか妖しげだった。
「ヒミツって……ちゃんとお金払って買ったんだよな?」
「うん、大丈夫!」
……怪しい。
けど、手に入れるまでに絶対何かがあった気がして、聞かない方が良い気がしてならない。
そう感じた俺は、チロに礼を言うと紙袋を机の鍵付きの引き出しにしまい込んだんだ。
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