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第48話

その後、俺と松若くんは夜遅くまで愛し合って、昼まで寝ていた。 「大丈夫?身体、しんどくない?」 「大丈夫っす」 起きると雅美くんはいつも通りランニングに行きたいって言って、いつも通り走っていた。 「……あ……」 「ん?どうしたの?」 家に到着して鍵を開けようとすると、雅美くんが空を見上げて驚いた顔をする。 「今、すげー大きな青い鳥が飛んでるのが見えたんすけど、その鳥の目がひとつしかなくて」 「えっ、そうなの?」 「はい」 トゥンナイの特徴そのままを話す雅美くん。 妖怪が見えるようになったのかな。 気になって、俺は指笛を鳴らしてトゥンナイを呼んだ。 「坊っちゃま、お久しぶりでございます」 トゥンナイはすぐに来てくれて、深々と頭を垂れる。 「うん、久しぶり」 「魁人坊っちゃま亡き後、ご結婚されてお忙しそうなご様子、拝見させて頂いておりました。すっかりご立派になられて……」 「そんな事ないよ、トゥンナイ」 雅美くんを見ると、その視線の先にはトゥンナイがいるように見えた。 「雅美くん?見えるの?」 「は…はい。はっきり見えます。さっき見たのと同じ鳥が見えます」 「初めまして、奥方様。トゥンナイと申します」 トゥンナイは雅美くんに近づくと、その片翼を雅美くんに差し出す。 「初めまして、雅美です」 雅美くんは少し緊張した様子でその翼に触れた。 「やっとご挨拶が出来、嬉しく思います」 「ありがとうございます。オレも先輩が話していた貴方の姿がはっきり見えて嬉しいです」 「坊っちゃまの事、どうぞよろしくお願い致します。手前もおふたりのお力になれる事があれば何でもするつもりでおります」 「ありがとう、トゥンナイ」 俺もその翼に手を伸ばし、撫でさする。 「あ、あの、オレ、先輩がオレと結婚する前にしてたみたいに、トゥンナイさんの背中に乗って空を飛んでみたいっす」 帰ろうとするトゥンナイに、雅美くんが言った。 「承知致しました。坊っちゃま、よろしいですよね?」 「あ、うん、俺も一緒に行くよ」 それからトゥンナイは俺たちを載せて空を飛んでくれた。 「この辺り一帯が全て、道籠家の敷地にございます」 「……すげーっすね、こんな風に見ると余計そう思えます」 晴れた空。 目の前に広がる山々と、谷の噴気口から立ち上る湯気。 『鬼』がいると言われ、先祖代々守ってきた大切な場所。 それを今こうしてトゥンナイに乗って雅美くんと見られるなんて、とても幸せな事だと思う。 「オレ、ここに暮らす人や妖怪を先輩と守っていくんすね」 雅美くんはそう言って、俺の手を握ってきてくれた。 「……こうして目でちゃんと見たら先輩と一緒に背負っていくものが何なのか分かった気がします」 「雅美くん……」 その瞳に映る景色がとても綺麗で、思わず抱き締めてしまう。 「繋……先輩……」 初めて名前を呼んでくれた事が嬉しくて、俺は雅美くんにキスをしていた。

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