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第54話
それからちょっと不機嫌そうな顔をしている雅美くんと一緒におにぎりを食べてふたりきりの時間を過ごした俺。
「帰ったら絶対続きしましょう!オレが絶対先輩のコト、いっぱいイかせますから!!」
「うん、分かったよ。楽しみにしてるね」
雅美くん、結構大声で言ってくれてその顔も可愛かったんだけど、誰かに聞かれてたらヤバいよな、絶対。
「ここでいいっす」
「じゃあ終わったら連絡するから、雅美くんも連絡して」
「うす」
休憩時間ギリギリまで一緒に過ごし、喫茶店のある教室の廊下まで雅美くんを送ると、俺は生徒会室に戻った。
「お疲れ様、交代するね。何か変わった事とかあった?」
「いえ、特にはないです」
「あ、あの、先輩ってバスケ部の松若と親戚って話、ホントですか?」
交代して教室を出る前に、後輩のひとりが俺に聞いてくる。
「あ、あぁ、うん、そうだけど」
「……じゃあ別に松若と付き合ったりしてないって事ですよね?オレの彼女の友達が松若のファンで今度告白したいらしくて、彼女に先輩と松若が最近仲良くて一緒にいるけど親戚って話もあるし、男同士で付き合ってるとかもないと思うけどホントの事聞いてきて欲しいって言われて……」
「……そうなんだ……」
彼に罪はない。
分かってるけど、胸がズキッとした。
付き合ってるどころか夫婦だけど、それは決して言えなかった。
けど、俺は言ってしまった。
「松若くんとは兄ぃのお葬式で初めてゆっくり話したら意気投合してね、それで一緒にいるようになったんだ。でね、俺もなんだけど松若くんも家の方針で高校卒業したら結婚する事になってるから付き合ってるとかそういう関係じゃないんだよ」
「えっ!?結婚!?」
「あっ、ごめん。つい話しちゃったけど、俺も松若くんも今の話、あんまり知られたくないからその彼女さんには他に好きな人がいるみたいだって言っておいてくれないかな」
後輩たちが驚いた顔で俺を見ていた。
「先輩、スゲーっすね!だから女の子たちに告白されても断ってたんすね」
「あ、あぁ、うん、まぁ、そうなんだよね」
適当に話を繋げて、俺は後輩たちと別れた。
「はぁ……」
どっと疲れた。
早く終わって帰りたい。
帰ったら……雅美くんとふたりきりになれるし。
俺は交代で来る事になっている輝政を待ちながら帰宅してからの事を考えてしまっていた。
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