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第56話

あれは、あれは絶対妖怪だ。 輝政に近づいて、一体何をするつもりなんだろう。 俺は終礼を終え、雅美くんに連絡すると待ち合わせ場所にした図書館で勉強しながら彼が来るのを待とうとしていたけど、さっきの事が頭から離れなくていまいち集中出来なかった。 そんな時、雅美くんから電話がかかってきた。 「もしもし」 『先輩、今終わったんで向かって……うぁっ!!』 「!?」 普通に話していたのに、突然雅美くんは痛そうな声を上げた。 「雅美くん、どうしたの?大丈夫?」 『けい……せんぱ……』 苦しそうな声。 それに代わって聞こえてきたのは、何故か輝政みたいな声だった。 『みたいな』というのは輝政の声なんだけどどこか違う、ノイズがかったような声だったからだ。 『みーつけた』 その声は俺を嘲笑っていた。 高らかに笑う声。 この声の主は輝政じゃない。 重く冷たい空気が再び俺を包んでいった。 『お前の一番大事な物、もらっちゃうから』 「な……っ……!!」 そこで電話は切れた。 あいつだ。 さっきの妖怪が輝政を利用して雅美くんを襲ったに違いない。 ……許さない。 俺を直接攻撃すればいい話なのに雅美くんを巻き込むなんて、絶対に許さない。 身体が火照っていくのを感じながら、俺は雅美くんを探す事にした。

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