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第57話

「雅美くん!」 図書館から出て、雅美くんの教室までの道にあった教室をくまなく見ていったけど、なかなか見つからない。 早く、早く見つけないと。 雅美くんの無事を祈りながら、俺は必死でその行方を探した。 「……!!」 雅美くんのクラスまであと少しという所まで来た時、俺はあの、重く冷たい空気を感じた。 あいつ、俺がこの空気を察知しているって気づいていないのか。 その空気が段々と強くなっていく方向に足を進めると、視聴覚室に行き着いた。 扉を開けて中に入ると、そこは違う場所になっていた。 「雅美くん!どこだ!!」 目の前には、薄暗い森。 俺は雅美くんの名前を叫びながら奥へと進んでいく。 「!!!」 大きな木の下。 そこに、輝政が誰かを抑えつけているのが見えた。 「う、あ、あぁ……っ……」 少し見えたその姿は、服を脱がされ美しい身体を晒されていた。 声にならない声を上げ、雅美くんはその瞳に涙を浮かべて俺を見る。 「っ……ざけんじゃねぇぇぇっ!!」 身体の中で湧き上がってきた熱が、声を出したと同時に爆発したような感覚。 こんなにも誰かに対して怒りを覚えた事はなかった。 そんな俺の怒りは、大きな炎となって俺自身を包んだ。 「離れろ、俺の雅美くんから離れろ!!」 今まで出した事のない声を上げながら、俺は輝政の肩を掴んで思い切り投げ飛ばしてしまっていた。 「あ、あぁ……っ……」 「雅美くん、ごめん、ごめんね……」 その身体には何ヶ所か引っ掻かれたような傷がつけられ、血が滲んでいた。 そして、下半身は透明な液体に塗れていて、俺はその姿にますます怒りを覚えた。 泣きながら俺に抱きついてきた雅美くんの身体は震え、俺の背中に痛いくらい指を食い込ませてきた。 絶対、絶対に許さない。 来ていた学ランとワイシャツを脱いで雅美くんに着せると、俺は倒れている輝政の方に向かった。 『な……なんだ、この力は。……お前にこんな力があるなんて……』 輝政の声だけどそれに他の低い音が混ざった不気味な声。 ふらふらしながら立ち上がったその瞳は白く、怪しく光っていた。 「俺を大した存在じゃないって思ったんだろ?あぁ、そうだよ。俺なんか兄ぃに比べたら何もかも足りてない。んな事分かってる。でもな、愛する人が傷つけられてんのに黙っていられるかよ!!」 背中が熱い。 けど、そんな事どうだっていい。 目の前のこいつを今すぐ消してしまいたい。 「俺は、お前だけは絶対に許さない!!」 その身体を掴みあげると、炎が俺とそいつを包む。 「ここからいなくなれ!そして……二度と現れるな!!」 断末魔の叫び声と共に輝政の身体から動物のような形のどす黒い影が抜け出し、俺の炎で焼き尽くされていった。

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