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【5】召喚獣と契約したり第一王子(異母兄)に会ったりフラグだらけの中を生き抜く。

 そうして月日は流れ、ついに俺は6歳になった。  母とともにこれからは王宮で暮らす事になるので王都へ向かった。  生誕祭かつ歓迎会が催される事になった。俺はこの日の記憶も持ち合わせていた。  前世では隣に母はいなかったが。  それ以外は会場の装飾をはじめ、なにからなにまで全て同一だ。  俺は大きく深呼吸した。ある種、ここから戦いは始まるのだ。異母兄である第一王子、ウィズとの第一次接近遭遇という一大イベントがあるのだ。緊張しながら会場に入った俺の耳に、そのとき貴族たちが話している声が響いてきた。 「ウィズ第一王子殿下は流石だよな。史上最年少の10歳にして、水系最高峰といわれる召喚獣ユーピルテを呼び出すとは」 「このままご成長なされば、人型化させる事も可能かもしれないと聞いたよ」  俺は目を伏せた。  そう、そうなのだ。兄も普通にすごいのだ。ただ、自慢じゃないが、俺の方がもうちょっとだけすごかっただけなのだ。  ちなみにユーピルテは、兄が15の年には人型になる。人型をとるというのは、召喚獣には少々難しいらしく、主人が魔力を貸し与える事で初めて成功するそうだ。  最初から人型のラクラスはちょっと例外的な強さを持っているのだが。ラクラスに関しては、俺の魔力関係なしにあの姿だと考えられる。前世で研究した限りでは。それにしても良かった。俺が契約したことはばれていないし、歴史は変わっている。  そこへコツコツと音が響いてきた。  靴のかかとをならせて歩み寄ってきたのは……兄だった。 「お前がフェルか?」  金糸の髪に紫紺の瞳。母似の俺は黒髪で、父に似たのは瞳の色の緑だけだ。  顔の造形は、ウィズが、それはもう父に瓜二つである。  現在10歳。  俺は兄を見上げた。前世では非常に険悪な仲だったことを思い出す。  嫌味ったらしいツンツンしたところが当時は気に食わなかったわけであるが、現在、俺は中身はもういい大人だ。大人なのだ。俺、ファイト! 「兄上? はじめまして! フェルです!」  満面の笑みを心がけた俺は、天真爛漫を装った。俺はこのキャラでいくのだ。  無害だとアピールし続けるのだ! 「ずっと兄上にお会いしたかったんです。僕の兄上はすごいってみんなが言うから、僕、嬉しくて嬉しくて!」 「フン。俺がすごいことは周知の事実だ。当然だな。誇れ」 「はい!」 「お前はできが悪く無能だと聞いているぞ。兄として嘆かわしい」  うるせぇよ。イラっとして、こめかみに青筋が浮きそうになった。しかし堪えた。  一時の怒りで人生を狂わせるわけにはいかない。  前世では怒りから攻撃魔術を放ったような気もするが、それはまずい。折れろ、俺! 「ごめんなさい……僕、僕、もっといっぱい頑張っていつか兄上のお役に立てるようになります!」 「愚鈍な者はいくら努力しても天才には勝てない」  前世で、そして多分現在の実力的にも、天才は俺の方だからな!  ったくこのガキ! だんだん俺の頬が筋肉痛を起こし始めた。それでも俺は必死に笑った。 「兄上が一番です! かっこよくて強い兄上! 大好き!」  やけくそになって俺は言い放った。兄が真っ赤になったのはそのときのことだった。  なんだ? さすがに嫌味だと思ったのか? 怒らせたか?  しかし……違ったらしかった。 「しょ、しょうがないから守ってやる! 俺はお前の兄だからな! この国の頂点に立つものだから常にというわけにはいかないかもしれないが、守ってやる! 喜べ!」 「ありがとうございます!」 「特別に、名前で呼ぶことを許可する! ウィズで良いぞ。と、特別だからな!」  ……。  なんだこれ。ちょっとよくわからないが、兄は、どこか嬉しそうに見えた。  まぁいい。とりあえず険悪な仲になるのは避けられた。  そんなこんなで、俺の城での生活は始まった。

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