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【12】王都にいてスローライフはできないか、というか他にも考えることがあった再会。
「殿下のお力は、この国をより正しく導いていくためには必要不可欠だ」
「……俺にはそんな力はない。でもな、できることがある限り、兄上を支えながら努力していこうと思う」
言葉を探しながら俺は口を動かした。するとユーリスがスッと目を細めて、片側の口角を持ち上げた。
「で、本音は?」
「っ、は?」
「フェル様の今のお言葉が本心ならばお力を隠すことは不可解だなと」
「か、隠してなんかいない! いないぞ!」
「ではそういうことにしておきましょう。また明日」
ユーリスは微笑したままそういうと退出していった。うわああ本当に喰えない。
こやつこそ一体何を考えているんだ……。
前世では確か、このやり取りの時、ユーリスはこう言った。
『殿下が歩む道がいかようであろうともともに生き、俺もまたともに逝きましょう。たとえ行く先が地獄だとしても、誠心誠意を込めてお供いたします。たとえこの身を地獄の業火で焼かれようとも』
俺はそれをあっさり信じて、あっさり裏切られたわけだが……。
当時は完全に、ユーリスは俺の側の人間だと思っていたのだったな。
とりあえずまぁ、王位簒奪を唆される第一のフラグはへし折ったと思う。
前世ではここで、ユーリスに、「あなたが王にふさわしい」と言われてその気になったのだ。思えば俺も本当に調子に乗っていたんだろうな……おだてられたら全てそれは相手の本音だと思っていて、褒められて当然だと思っていたのだっけ。若かったな……。
問題はこれからだ。
魔力や召喚獣は危機が迫らないとどうにもならない、自分の意思では自由にならない設定で行こう。うん、適度に失敗だ。それならばユーリスがフォローしてくれた言葉を皆が信じたままでいてくれると思う。
それと俺には、父を流行病から救うという使命が残っている。
そう医術だ。俺はそろそろ本格的に流行病への対処を始めるべきなのだ。
……ん。
そうだ!
前世ではユーリスに利用されたわけであるが(多分)……今世ではそもそも敵に回さなければいいんじゃないのか……?
医術に必要な薬草もアルバース子爵ならすぐに用意できる。
逆にユーリスを唆して……利用して……いやいや言葉が悪い、協力して、薬草園を作るってどうだろうか。
王宮の敷地は無駄に広いから、薬草園を建設してもらうくらい簡単だ。
離れには医術師の集う塔もあるし。
俺は今回の被災で人命の尊さに目覚めて、医術の道を志すことに決めた! という設定はどうだろうか。土に触れて薬草をまったり栽培しながら、医術の勉強に打ち込む!
これならば、王都の王宮にいてもスローライフを送れるんじゃないのか?
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