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【13】王都にいてスローライフはできないか、というか他にも考えることがあった再会。②

 うん、それがいい。俺は翌日には、父に熱く訴えた。 「……というわけで、俺は医術の道を志したいんです!」 「フェル……君はなんて優しいんだ! 父は感激した!」  すぐに俺の提案は通り、その日は早い時間にユーリスがやってきた。  俺は昨夜のうちにメモを作成していたので、羊皮紙片手にユーリスに告げた。 「とりあえず以上の薬草を栽培したいんだ」 「観賞用とされている種類も多いですね。どこで効能を見つけたのかは突っ込まないのでご安心ください」 「っ」 「1ヶ月以内には全て揃えます。医術塔の隣の敷地を薬草園として開拓します。それでよろしいですか?」 「あ、ああ。世話は俺がやる」 「病弱で日光に当たると具合が悪くなる仮病の設定はかなぐり捨てて?」 「っ」 「冗談ですよ。我が子爵家としても、医術の浸透度が低いこの国で必死に普及に努めているところだったので、フェル様のご提案は追い風だ。当家の囲っている薬師たちにも声をかけます。これで少しでもこの国が良くなれば本望だ」  ユーリスはそう言って微笑した。  こうして見ていると、本当に悪いやつには見えないのだ。全く詐欺である。  その後俺は、ユーリスに連れられて医術塔に入った。  仮病を使いまくっていたため見慣れた場所ではあるが、診察室以外に足を踏み入れるのは初めてだった。 「初めまして、フェル第二王子殿下。わしが、この医術等の総責任者を務めさせていただいているナーガスじゃ」  口調は老人のようだったが、そこに立っていたのは、今の俺と同じくらいにしか見えない少年だった。外見だけが少年なのだということは、彼の特徴的な尖った耳を見てすぐにわかった。エルフだ。長命種のエルフは、百年に二歳程度しか歳を取らないと聞いている。会釈してから俺は、肝心の流行病への特効薬であるパラデェッタという花について話題にあげた。 「これは新発見だ。確かにあの花の亜種には薬効が認められている。よって聞いた限り、その成分は、最近僻地を中心に流行の兆しを見せ始めているラララガ感冒に効くように思えるのう。感冒は、僻地から始まり常に王都までたどり着くものじゃ。抑えられるものならば抑えたいのう」  年齢はずっと上だろうが、美少年にしか見えないナーガスは、白磁の頬を赤く染めた。  高揚した様子で、そばにあった羊皮紙に、何か走り書きを始めた。  そんな調子で、挨拶もそこそこに俺たちは、いつしか意気投合しながら医術について語り合っていた。俺は後ろにユーリスが立っていることなどすっかり忘れていた。  帰り際。 「医術の道を志すも何も、すでに習得済みに思えましたけどね」 「……!」 「深い事情はお聞きしませんが、いつか教えてもらうくらいには信頼されたいものだなぁ」  冗談めかして笑ったユーリスに対して、俺は何も言わなかった。  その後月日は流れ、無事に薬草園は完成した。  俺は、最低限の魔術と召喚術の講義の他は、医術塔にこもることを許された。  母は、俺の反抗期が終わってしまい、わがままをあまり言われなくなってしまったと寂しがっていた……。

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