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第7話
「お疲れ様でした。またのご来店をお待ち致しております」
笑顔の青年――ローラというイケメンと、砂鳥という少年に見送られ、俺は今日も絢樫Cafe&マッサージを後にした。
初日以来――俺の中で、店への恐怖は、何故なのか……実を言えば、別に減ってはいない。本能的な恐怖とでも言うのか、遠くから近づく時と、遠ざかって家に向かう時は、未だに背筋がゾッとする。
だが、不思議とその感覚は、店に近づくにつれて減少していくし、店の前に来た時なんて、やっと本日の肩こりから解放されるとテンションが上がる。今までの人生で、こういう経験は無い。初めての事だから……単純に考えすぎなのかなと、最近では考えている。
考えすぎて、俺にとっての楽園と解放を逃すわけにはいかないだろう。
ただ……最近、気になる事がひとつある。
必ず気持ち良すぎて、途中でウトウトしてしまう事だ。
いつ微睡み始めたのかすら記憶にない。だが、パンと最後に肩を叩かれて、俺は目を覚ましている。うーん。相当疲れが溜まっているんだろうか……。それともローラ青年が、上手すぎるんだろうか。
俺、最初は、ローラというのは、店の名前なのかと、勘違いをしていた。
しかし、違った。
一度だけ、俺は勇気を出して、雑談を吹っかけたのだ。基本的にコミュ障の俺的には、多大なる努力を要したが。
「ローラというのは、店名か?」
「――いや。和名で戸籍を取得した時に、露嬉と当てていて、俺の名前ですよ」
彼は笑顔だったから、俺はホッとしたものである。
俺は、小心者だが、ぶっきらぼうな口調だ。しかしこれは、俺に限った事では無い。
この地方都市の方言のようなものなのだ。みんな、こんな感じだ。
その中でも、俺はちょっと癖が強いだけである。例えるなら、強い訛りと言える。
ローラ達は、都会――どころか、海外から来た様子だ。
あんまり悪い印象を持たれたくないのもあって、俺は、必要最低限しか話さない。
さて、そんな今日も、俺は癒されに向かった。
バスローブに着替え、寝台に上がる。
……ああ、そして……また、”いつもの”……夢が始まる。
目を覚ますと、どんな夢なのかは忘れてしまうのに、始まると”いつも”だと分かる。
「そろそろ、良いか」
何が、なんだろう?
俺は、ぼんやりとしたまま、首を傾げようとして、失敗した。
体に力が入らない。下着をおろされた時、僅かに羞恥から意識が強く戻ったが、基本的に霞がかかっている気分だ。
「あ……ああ」
指が入ってくる。それだけで、俺の体は疼く。後ろの孔を暴かれる時、俺の体は歓喜するようになった。最近では、裸にされて直ぐに指が入ってくる。するとそれだけで、俺の陰茎はそそり立つのだ。俺は男だから濡れるわけが無いし、排泄するための器官から愛液が出るわけも無いのだが、この指が挿入される際、いつもクチュリと卑猥な水音が響く。
「あ、ぁァ……あ、あ、ン……んぅ、ひぁ!」
覚えさせられた前立腺――そこを的確に刺激されると、頭が真っ白に染まる。しかし俺は、果てられない。どうしようもなく出したいと思うのに、それをしてはダメだと強く思うのだ。我ながら意味不明の支離滅裂な思考だが、夢なんて、多くはそんなものなのだろう。俺は、夢について考えるよりも、夢の中であっても俺には現実に思える、気持ちの良い刺激を追う事に夢中になった。
「う、うぁ……ァ……」
グチュグチュと音を立てながら、二本の指を抜き差しされる。時折かき混ぜるようにされ、時々振動させられる。どちらの時であっても、俺の感じる前立腺に、刺激が届く。すると射精感が募っていく。だが――最近の俺は、そのまま、ドライでイかされている。
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