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第8話

 俺は、ローラの指の虜だ。  愛おしくて仕方がない。  もう、彼の指が無くては、生きていけないかもしれない。  マッサージに来ているはずなのだが、俺は、今では、彼自身に与えられる別の……この性的な快楽に夢中なのだ。夢の中では、その自覚が有る。いつも思い出す。 「あ、っ、ッ、ン、く」  その時、指が増えた。三本の指が、俺の中を広げるようにして、隙間を開けたのが分かる。ビクビクと俺の菊門が収縮しながら、彼の指を締め付けている。開いたり閉じたりを暫く繰り返された後、揃えられた指が、緩慢に抽挿された。 「あ、ああ、ア、あ!!」  指先が前立腺を掠めた。  しかし――今度は、気持ち良い場所に当たらない。  俺は瞳でローラに懇願した。彼は、ニヤリと笑っている。 「どうされたい?」 「あ、あ、いつもの所……突いて、ァん」  俺の口からは、普段からは信じられない甘ったる声が出る。内心では、確かに羞恥を覚えるのだ。子供みたいで、恥ずかしいから。けれど、この夢の中で、俺はローラの前だと素直になれる。本当の俺は、弱虫で子供っぽいのだ。 「だーめ」 「あ、ああ、あ、あ、あ、あ、ダメだ、イきたいっ」 「――もっと太いもので貫かれたいだろ?」  ローラが俺の耳元で囁いた。  その瞬間、俺の頭の中が、その言葉一色に塗り替えられた。  そうだ……はっきりと自覚した……指では足りない。 「あ、あ」  一度そう考えてしまうと、体が震え始めた。太ももを震わせ、俺は必死で吐息する。違う、指が当たらないのではないのだ、指では、足りないのだ。俺の目に、自分でも欲望が灯ったのが分かった。  更に、ローラの指が緩慢な動きになった時、俺はもっと激しく、熱く固く長いものを中で動かされたいという、肉欲が高まった。頭の中が――率直に言って、貫かれる事で染まった。経験など無い。だが、明確に俺は、自分が求めているものを悟っていた。 「挿れて、って、言ってみろ」 「あ、ぁぁあっ、それは……」  だめだ。さすがに、だめだ。いくら、己の体が欲しているとしても。  俺は男なのだ。男が男に貫かれるなど、ありえない。信念として、俺には無理だ。 「それは?」 「うああっ……ゃ、ぁ……なんで、なんで、どうしていつもみたいに……うう」  子供みたいにポロポロと俺は涙した。指でいつもなら、イかせてくれる。  前に限らなかったとしても、それが中でだけであっても、絶頂を感じられる。  俺はそれが欲しくて堪らない。なのに。俺の体は、ローラの指以外の部分を求めているし、ローラも酷い事を言う。 「やぁァ」 「言え。『命令』だ。『素直になれ』」 「お願いだからっ、早く挿れてくれ……――!!! ひ、ひ、あ、あア――!!」  俺は無意識に本心を口走っていた。気づいたら、漏れていた。  それと、ローラの陰茎の先端が俺の中に入ってきたのは、ほぼ同時だった。 「うああ、熱い、熱い、あ、あ、ダメ、体が熔けちゃう、あ、ああ」  ゆっくりとゆっくりと進み、亀頭部分が入りきった。圧倒的な存在感に、内側の壁を抉るように広げられる。俺の中は、絡みつき、彼を離さないとでも言うかのように震え、どんどんローラの自身を飲み込み始めた。 「あ、ああ、あ、ああ」  暴かれている。いいや、違う。俺は、ローラに、この時、支配されていた。  俺の全てが、ローラに奪われていく。それが――どうしようもなく嬉しかった。  衝撃と歓喜で、俺は涙を零す。 「あ、あ、あ」  ローラがじっくりと味わうように、俺の中に進んでくる。その度に、俺の中が開かれていく。全身がその箇所であるかのような錯覚が酷い。入ってくる。ああ……。

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