9 / 53

第9話

 全て入りきった時、俺は肩で何度も熱い吐息をした。  寝台に膝を立てた状態の、正常位。僅かに腰を浮かせ、ローラに俺は体を持たれている。思わず俺は、シーツを握った。怖い。これは、未知の行為という意味もあるし、男に穿たれて喜んでいる俺の体が怖いというのもあるが――何よりも、これからもたらされるのだろう、快楽が怖かった。何せ、挿入されただけで……気づいたら、俺は、果てていたのだ。見れば、ローラの腹部を、俺が出したものが汚していた。 「動くぞ」 「あ、あ、うあ」 「ほら」 「ああ!!!」  ローラが腰を揺さぶった。それだけで、俺の満たされた内部の全てが、快楽を訴えた。一つに繋がった箇所から、全身にくまなく気持ち良さが広がっていく。温水のような心地の良い快楽から始まり、それはすぐに熱に変わる。ただ単に入れている楔を揺らされただけで、俺は灼かれた。この状態で、前立腺を突き上げられたら、俺は、どうなってしまうのだろう。漠然とそう考えた時、ゆっくりとローラが前後に動き始めた。 「あ、あ、あ」  引き抜かれる時、俺はそれに合わせて声を出してしまった。 「ン――!!」  そして再び入ってくる時は、嬌声を堪える事に、必死になった。 「ああ、ァ、ぁ」 「どうだ? 初めては?」 「あ、あ……だめだ、熔ける、熔けちゃう」 「――噛むぞ」 「!!!」  不意にローラが、俺の太ももをひと舐めしてから、甘く噛んだ。 「あああっ!」  その瞬間、俺はまた果てた。二度もあっさりと射精したのなど、初めてだ。覚えさせられた空イキだけならば、何度かさせられた事がある。だが、実際に吐精を連続でしたのは、これが初めてだった。だが、俺はもう知っている。ローラに噛まれると、死ぬほど気持ちが良いのだという事を。 「うああっ、ン――!!」  それからローラが抽挿を再開した。ギリギリまで引き抜いては、奥深くまで貫く。それを繰り返してから、時に中に根元まで入れて、俺に形を覚えこませるかのように動きを止める。そうされた時、俺の中は、ビクビクと動く。すると俺には、ローラの形がはっきりと分かる。 「ぁ、ぁ、ァん、ぁン、ンん……っ、ぁ……」  彼の先端が、グッと俺の前立腺を押し上げた。ガクガクと震えながら、俺はきつく目を閉じる。気持ち良い。結果、また俺は射精した。おかしい。いつもは出したくても出せないのに、今日はいやでも出る。  熱く太く長く硬いもののせいなのだろうか……?  分からない。ただローラの肉棒が、俺にとって、彼の指よりも愛おしい存在に変わったのは確かだ。 「ひ、っ、ひぁ、あ、あ、んっ」 「どうだ?」 「あ、あ、やぁ……ヤぁ……ァ」 「何が嫌なんだ?」 「……っ、と。あ……っと、もっと!」  俺はついに懇願した。もう焦がれた体が我慢ならない。激しくグチャグチャに突かれたかった。そう願っていると、動きを止めていたローラがニヤっと笑い――「!!」  俺は目を見開き、絶叫した。  ガンガンと、それまでとは異なり、激しく腰を打ち付け始めたローラ。  逃れようと俺は夢中で、体を退こうとした。だが、できない。ローラが、がっしりと俺の体を掴んでいるからだ。太ももを持ち上げ、何度も激しく貫かれる。肌と肌がぶつかる乾いた音が響いてくる。ダメだ、あ、俺はもうダメだ。 「いやああああああああああ」 「もっと啼け」 「あ、あ、あああ、あ、あっ、あ、あ、だめだ、クる。あ、出る、あ、ああ」 「俺に突かれて果てる感覚、きっちりと覚えておけ」 「あ――!!」  そのまま俺は、一日に四度目の射精という、人生で初めての経験を果たした。  すっかり透明に変わった俺の精液が、鈍い勢いで鈴口から飛び散る。 「や、っ、もう、出来ない」 「まだ、だ。俺は満足してない」 「あ、ああン」  ローラは、俺の呼吸が整うまでの間、少しだけ動きを止めた。  だが、俺の息が少し収まった段階で、再度体を揺さぶった。  頭を振って、俺は泣き叫ぶ。しかし、許されない。  直ぐに快楽自体も復活した。ググっと奥深くまで貫かれる度、全身に快楽が響く。

ともだちにシェアしよう!