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第19話
「今日も、お越し頂いて、有難うございました」
「あ、ああ……?」
気づくと俺は、寝台に着替えた状態で座っていた。
――最近、我に返ると、終わっているどころか、着替えが終わっていたり、立ち去ろうとしている場合も多い。何なんだろうな……。俺は首を傾げた。なお、今日は全身に心地の良い倦怠感があるものの、体には違和感等は無い。
立ち上がり、体が軽くなったのを確認してから、俺は伝えた。
「また来る」
「お待ちしています」
こうして、この日も俺は、マッサージ店を後にした。
そして――歩きながら、考えた。
やはり、何かがおかしい。だいぶ遠ざかってから、俺は振り返った。
遠目に店の看板が見える。
最初の頃の恐怖は、既に無い。だが、こんなにも頻繁に、微睡む――と言うよりも、記憶を飛ばすマッサージ等、本当にあるのだろうか。そう考えた時、ツキンと首筋が鈍く痛んだ。無意識に、右手で、左の首筋を抑える。
すると、頭の中に、一糸まとわぬ姿になっている自分が過ぎった。
狼狽えて口元を抑える。
それが思い浮かんだ瞬間、ありえない場所が疼いた。体の最奥だ。
――貫かれたい。
無意識にそう考えた時、俺はハッとした。俺は、一体何を考えているんだ。自分の思考に動揺した時、意地悪く笑うローラの瞳が頭に浮かんだ。そんな表情、見た事が無いはずなのに。しかし俺は……ローラの太く長く硬いモノで、思う存分突き上げられたいと感じていた。嘘だ。え、なんで?
思わず赤面しながら、歩みを再開する。
どうしてこんな事を考えているんだろう。これじゃあ、まるで恋だ。
けれど、ローラの指先で、ドロドロにされていく全身に思いを馳せてしまう。
ぬちゃぬちゃとかき混ぜられたい。
そんな馬鹿な。嘘だろ?
だが俺はこの時、はっきりと感じていた――足りない、と。
歩いたまま、首だけで店に振り返る。
店に行ったからといって、性的なマッサージのお店ではない以上、こんな願望は叶わない。そもそも性風俗だって、本番は禁止であったような気もする。
「俺、何を考えて……」
片手で唇を抑えたまま、呟いた。
その夜――俺は、自分で自分の乳首を左手で弄り、右手で陰茎を握りながら、自慰に没頭した。ローラの姿を思い浮かべながら。
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