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第25話

 次に目を覚ました時、俺はローラの腕の中に見た。不意に入ってきた彼の顔に――邪な夢を見てしまった俺は、赤面しそうになった。ローラは、そんな俺を見て、微笑している。 「寄りかかって眠ってしまわれたので、俺、一晩中抱っこしちゃってましたよ」  そう言って俺を腕から開放したローラは、いつもと変わらないように見えた。  しかし――ドクンドクンと煩い俺の鼓動は、いつもとは違う。 「わ、悪い……そ、の、疲れてて……」 「そういう事もありますよね。じゃ、そろそろ帰りますか」 「あ、ああ」  俺が頷いた時――不意に、嫌な感じが消えた。  首を傾げながら、俺は周囲を見渡す。鏡が視界に入ったが、何の感覚もしない。 「さすがは、藍円寺さんですね。俺、怖かったけど、藍円寺さんと一緒だったから、ひと晩耐えられました」  ローラが、穏やかに笑いながら、俺に告げた。  ――え? 「あ、当たり前だ」  俺は、そう答えつつも……まさか御札が効いたのだろうかと悩んだ。  こうして、お化け屋敷の浄化は、一段落したのである。  ――この時の俺は、まだ自分の身に何が起きているのかはおろか、惹きつけられる彼の正体すら、何一つ知らず、ただただお化け屋敷に怯えているだけだった。けれど。胸の奥底に、恋の疼きが芽生えていたのは、確実だ。いつ振り返ってみても、既にこの瞬間には、俺は、彼に惹かれていた。  よってここまでが、俺と彼の恋の契機の物語と言える。

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