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第27話

 ちなみに、火朽桔音さんというのは、僕よりも前にローラに拾われた妖怪である。  日本では狐火と呼ばれる妖怪(?)というか、現象(?)の存在だ。  FOX FIRE …… は、外来語では、朽ち果てる事だそうで、華麗にローラがキラキラした命名をして、カクチキツネさんという名前になったらしい。 「どこで喫茶店をするの?」 「新南津市という場所だ」 「――へ? どこそれ?」  てっきり現在暮らしている都内の一角にオープンするのだろうと考えていた僕は、聞いたことのない地名に、首を傾げるしかない。 「ド田舎の、山に囲まれた盆地にある。歴史は古い。市町村合併もしなかった程度に、そこそこ人口もいて、裕福と言えなくはない人間の暮らす一地域だ」 「へぇ」 「が」 「何々?」 「――裕福な理由は、税収じゃない。現地にな、面白いものがあるらしいんだ」 「面白いもの?」 「日本屈指の、心霊大学」 「は?」 「寧ろ、唯一と言っても良いかもな。霊能力者を育成する専門の大学があるんだ。そこを出てない霊能力者なんぞ、全てモグリとしても過言では無い――らしい。地域全体にも、心霊現象といったものに、理解がある住人や、代々”そっち系”のお家もあるそうだ」  僕は、楽しげなローラを見て、思わず目を細めた。 「え? それさ、僕らが妖怪だって、一発で見抜かれて、除霊フラグじゃなくて?」 「そのスリルが楽しいんだろ」  やはり彼は突飛であり――頭がおかしい。どうかしている。  だが……結局こうして、僕達の引越しは決定した。

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