27 / 53
第27話
ちなみに、火朽桔音さんというのは、僕よりも前にローラに拾われた妖怪である。
日本では狐火と呼ばれる妖怪(?)というか、現象(?)の存在だ。
FOX FIRE …… は、外来語では、朽ち果てる事だそうで、華麗にローラがキラキラした命名をして、カクチキツネさんという名前になったらしい。
「どこで喫茶店をするの?」
「新南津市という場所だ」
「――へ? どこそれ?」
てっきり現在暮らしている都内の一角にオープンするのだろうと考えていた僕は、聞いたことのない地名に、首を傾げるしかない。
「ド田舎の、山に囲まれた盆地にある。歴史は古い。市町村合併もしなかった程度に、そこそこ人口もいて、裕福と言えなくはない人間の暮らす一地域だ」
「へぇ」
「が」
「何々?」
「――裕福な理由は、税収じゃない。現地にな、面白いものがあるらしいんだ」
「面白いもの?」
「日本屈指の、心霊大学」
「は?」
「寧ろ、唯一と言っても良いかもな。霊能力者を育成する専門の大学があるんだ。そこを出てない霊能力者なんぞ、全てモグリとしても過言では無い――らしい。地域全体にも、心霊現象といったものに、理解がある住人や、代々”そっち系”のお家もあるそうだ」
僕は、楽しげなローラを見て、思わず目を細めた。
「え? それさ、僕らが妖怪だって、一発で見抜かれて、除霊フラグじゃなくて?」
「そのスリルが楽しいんだろ」
やはり彼は突飛であり――頭がおかしい。どうかしている。
だが……結局こうして、僕達の引越しは決定した。
ともだちにシェアしよう!