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第34話
「やぁっ……ッ、ンぅ」
ローラが、藍円寺さんの下着を取り去り、陰茎を舌で舐めた。筋を何度か舐めた後、口に含む。そしてしゃぶり始めた。藍円寺さんが号泣した。イきたくてイきたくて仕方が無いと伝わってくる。しかし、肉体的に暗示のせいで、果てられないのだ。強すぎる快楽から、藍円寺さんが両手でローラを押し返そうとする。しかしローラの髪の毛をかき混ぜるだけの結果に終わった。
「あ、ああっ、ン、あ、ああ! 頼む、頼むから、も、もう出させてくれ」
「イかせてくれ。言い直せ」
「イ、イかせて……ああンっ」
「ローラ様のお口に出したいんですっ、って、言ってみろ」
「ロ、ローラ様のお口に……ぁ……出したいんです……」
「やり直しだ。最後の『ですっ』の小さい『っ』が重要なんだよ。可愛らしく言え」
「だ、出したい……ですっ、ぁ、ぁ、ああああああああああああ!」
淫語(?)を言わせた後、ようやくローラがイかせてあげた。
しかしこれは決してご褒美では無いだろう。
単純にローラが食事をしたかったに過ぎないはずだ。
現に、実に美味しそうに精子を飲んでいる。
――僕らが人間と同じ食事をするのは、ただの娯楽である。
「うああああああ、や、そんな所、あ!」
ローラが、藍円寺さんの後孔に指を二本同時に入れた。マッサージ用のオイルをつけてはいるが、すんなりと入ったのはそれが理由ではない。ローラの体が、人間に対して、性行為をしやすくする特質を持っているおかげだ。ローラの指が入る時、それは男女も処女童貞も何も問わず、百戦錬磨の壺のように、人間の体は解れる(と、読んだ事がある)。
「嘘、嘘、あ、ああ!」
「ほら、全部入った」
「嘘、あ!!!!」
「嘘? 気持ち良いのが嘘だって?」
「あ、あ、あ」
「嘘じゃないだろ? こうすると、もっと良いだろ?」
「うああああああああ」
ローラが指で藍円寺さんの中をかき混ぜる。すると声を上げた藍円寺さんがボロボロと泣き出した。しかしその瞳には、快楽しか宿っていない。完全に震えている唇が、初めての刺激の虜になっている様を象徴している。
「へぇ、ココか。ココが好きなのか?」
「いやあぁっ、あ、あ、あああああ!」
「前立腺っていうみたいだぞ?」
「あ、ああっ、は、あ、ああっ、あ、嘘、ま、また出る」
「後ろを弄られただけで、果てる。今後は、永劫お前の体はそうなる」
「うああああああああああああああああ」
藍円寺さんが射精した。そのままローラの腕の中に崩折れた。
肩で息をしている藍円寺さんを、ゆっくりとローラが横にする。
そして、一体どうやっているのかは不明だが、下着を洗濯済のように綺麗にし、それを穿かせ、バスローブも着付けた。そうして藍円寺さんの呼吸が落ち着いた頃、指をパチンと鳴らした。暗示を解いたのである。この合図によって解ける暗示と、解けない種類の暗示が存在するらしい。解いた直後、数分間は、人間はぼんやりとしている。その、まさに現在、ローラが藍円寺さんが大量に体にまとわりつかせていた弱い霊達を全て祓った。手で払ったのである。霊能力が強い人間には、それだけ多くの霊がまとわりつく。本当に強い、それこそ職業的な除霊師等には、逆に一般人よりまとわりつく霊は少ないが。
「終わりましたよ」
ローラが、先程までとは著しく異なる微笑を浮かべた。
藍円寺さんが、我に返ったように大きく目を見開き、上半身を起こした。
――すごい!
――なんだこのマッサージは!
――まるで本家のご隠居に肩揉みしてもらった時のような感覚だ!
僕は、藍円寺さんには藍円寺さんなりの藍円寺さん(じゃないけれど)が存在するんだなとは思いつつ、藍円寺さんもまた、他のお客様達と変わらない感想を抱いた事に少しホッとした。
「……また来る」
こうして、藍円寺さんは帰っていった。
僕とローラは笑顔で見送ってから、閉店作業を再開した。
「美味しかった?」
「おう。血を今日は我慢しても良いかな程度に、美味い汁をご馳走になったな」
「へぇ。珍しいね。大好物とは言え、血も、いつもはとるのに」
「――ま、気分だな」
「ふぅん。また来てくれるかな?」
「絶対来るね。断言しても良い。あいつ、相当、微弱霊魔被害の頭痛肩こりに悩んでた」
そんなやり取りをしながら、僕達は笑いあった。
人間の感性だったらきっと、笑い事では無いのだろうが、僕達は妖怪である。
僕は、そう考えながら、店の外にCLOSEの看板を下げた。
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