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第46話

 ローラが、薄い藍円寺さんの唇を舌で舐める。するとピクンと藍円寺さんが震えた。睫毛が揺れている。既に情欲が滲んでいる藍円寺さんの瞳は凄艶で、彼もまたローラを求めているのが、よく分かる。  唇を何度も舐めた後、ローラが藍円寺さんの口を貪った。  ローラは、惚れない限り、キスをしない。ああ、やっぱり本気なんだなぁ。  ニヤニヤしそうになったが、僕は堪えた。  藍円寺さんの頬に手を添え、角度を何度か変えながら、深々と唇を奪っている。震えている藍円寺さんが、小動物に見えた。外見は肉食獣なんだけど。 「ぁ」  木の床の上に、正面から両手首を掴んでローラが藍円寺さんを押し倒した時、藍円寺さんが小さく声を上げた。ローラはそのまま、藍円寺さんの首元を噛む。吸血を始めたようで、されるがままの藍円寺さんが、次第に何かを堪えるような表情になった。吸血時にローラが注入している特有の快楽物質で、体を焦がされているのだろう。  基本的には、藍円寺さんは声を出すのが嫌みたいだし、当初の声も大体小さい。  それが分かっているからこそ、ローラは、無理矢理声を出させ、喋らせ、大きく喘がせるのだろう。袈裟をローラが取り去って、それから和装の上から、乳首を摘んだ。とっくに藍円寺さんの双方の胸は、ローラに開発されてしまっているようで、その刺激だけで、藍円寺さんが涙を滲ませたのが見て取れた。 「止め、止めてくれ、隣に、人……あ、砂鳥くんも……いるし……」  不意に藍円寺さんが言った。どうやら、暗示が緩んだらしい。  暗示というのは、時たま緩むそうだ。そういう時は、体の自由は聞かないし、ローラの言いなりのままではあるのだが、少しだけ理性が戻るという。しかし、問題はない。どうせ完全に暗示を解けば、全てを人間は、基本的に忘れてしまうからだ。余程、力が強くなければ、問題はゼロだ。 「お前が声を我慢すれば、誰にも聞こえない。そうだろ?」 「あ、ああ……」  今の、『そうだろ?』というのも、暗示だ。今回のは、暗示をかけ直すと同時に、一種のプレイだ……。声を堪える藍円寺さんを、ローラは楽しむ気なのだろう。堪えなきゃと頑張るのに、声が漏れる姿――さぞや、ローラにとっては愉快だろう。何せ、僕もちょっとワクワクする。 「ぁ……ふァ」  着物の上から、ローラが藍円寺さんの陰茎をまさぐる。そして合わせ目をはだけて、太ももを露出させた。既に張り詰めている藍円寺さんのものが、ローラが下着をおろすと、プルンと顕になる。 「初回以来だな」  そう言うと、ローラが、藍円寺さんの陰茎を口に含んだ。 「あっ」  藍円寺さんがビクリとする。それから両手で口を抑えた。 「ン、んんっ」  鼻を抜けるような甘い声がする。それを楽しむようにして、ローラが唇に力を込めて、藍円寺さんの陰茎をいたぶる。根元付近まで飲み込んでは、ゆっくりと舐めあげて、それから重点的にカリ首を刺激している。いやいやとするように、藍円寺さんが首を振る。必死で声をこらえているのが、伝わって来る。 「あ、ああっ」  その時ローラが口を離し、指で藍円寺さんの鈴口を意地悪く開いた。パクリと口を開いた先端を一瞥してから、ローラが舌先でその箇所を刺激する。すると藍円寺さんが、体を硬直させた。「止めてくれ」という内心が伝わって来る。快楽が強すぎるらしい。しかしローラは止めないし、どころかそこに――快楽を感じさせる己の体液を流し込み始めた。 「うああっ」  堪えきれなかったようで、藍円寺さんが一際大きく喘いだ。

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