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第48話

 さて、翌朝、僕は四時頃隣室へと向かった。  すると、ローラは藍円寺さんを後ろから抱きしめていた。既に僧服も袈裟も着付けられているが、藍円寺さんの瞳は虚ろだ。まだ、暗示が効いているのだろう。僕は、二人を映し出している鏡を一瞥し、苦笑した。きっと鏡プレイを楽しんだんだろうな。 「ん」  藍円寺さんが身動ぎしたのは、五時半を過ぎてからの事だった。 「あ、あれ?」  素の声で、藍円寺さんが目を見開いた。ガバッとローラから離れた。ローラもすんなりと腕を離す。 「寄りかかって眠ってしまわれたので、俺、一晩中抱っこしちゃってましたよ」  ローラがわざとらしい人の良さそうな微苦笑で告げる。  すると、瞬時に藍円寺さんが赤面した。 「わ、悪い……そ、の、疲れてて……」 「そういう事もありますよね。じゃ、そろそろ帰りますか」 「あ、ああ」  藍円寺さんが慌てたように頷いた。ローラが立ち上がる。既に藍円寺さんは立ち上がっていた。僕は直後、驚いた。ローラが壁に触れたのだが――瞬間、バシンと僕は衝撃波を感じた。人間に感じ取れたかは不明だったが……それと同時に、お化け屋敷自体が浄化されたのが分かった。  ローラは、吸血鬼である。魔の存在だ。  だけど――強い魔は、より弱い魔を、殲滅・消失させられる。  それは、人間のいう浄化と同じ行為だ。 「さすがは、藍円寺さんですね。俺、怖かったけど、藍円寺さんと一緒だったから、ひと晩耐えられました」  ローラがそんな事を嘯く。  こうして、朝の日差しの中へと、僕らは出た。  背後で閉まる民家の扉の音を聞きながら、僕は一つのお化け屋敷騒動の終焉を見たのである。

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