51 / 53

第51話 黒猫③

「何というか、今回の服は、この前の民家の時と違って既製品だな……見た目は日本って感じだけど……中身は普段のシャツと一緒だな」  抱きしめるようにして、俺をマッサージ用のベッドに座らせながら、ローラが退屈そうに言った。何だか申し訳ない気持ちになってくる。夢の中だというのに。 「見た目がそそる効果しか無ぇな。残念だ」  しかし、続いた声を聞いて、俺は嬉しくなってしまった。夢とはいえ、ローラの気分を昂らせることが出来たらしいのだ。胸が疼いたから、俺は大きく吐息した。すると、ローラが俺の頬に手を添えた。 「――藍円寺は、俺のことが好きなのか?」  夢の中だから、俺はすんなりと頷くことが出来た。美しいローラの顔をうっとりしながら見てしまう。 「好き。好きだ」 「本当か?」 「うん」 「――ちゃんと好きって言えよ。うん、じゃなく」 「好きだ」 「もう一回」 「好き」  何度も口に出していると、無性に恥ずかしくなってきた。頬が熱い。羞恥にかられたから瞼をきつく閉じて、俺は顔を背けようとした。しかし、ローラが今度は両手で俺の頬に触れ、正面を向かせた。 「どのくらい?」 「え?」 「俺のことが、どのくらい好きなんだ?」  その言葉に、俺は目を丸くした。世界で一番好きだからだ。ローラはもう天使の域を超えて、俺の中の神様なのかもしれない。違う宗教になってしまうが。ま、まぁ良いだろう。俺は住職だが、そこまで御仏に心を奪われているだとかではない。それはそれでよろしくは無いのだろうが……。 「……」 「藍円寺、教えてくれ。な?」 「……」  ローラの頼みだ。応えたい。けれど、言葉が見つからない。だから唇をうっすらと開いて、何と言おうか考えていた時だった。 「ん」  俺の唇を、ローラが奪った。侵入してきたローラの舌が、俺の舌を搦めとる。後頭部に片手を回され、もう一方の手では顎を持たれ、深々と貪られた。ゾクリと背筋に快楽が走る。 「ぁ」  唇が離れた時、唾液が繋がっていた。その透明な糸を見ていると、ローラが俺の袈裟を手際よく取り去った。そして俺をゆっくりと押し倒し、首筋を舐めた。 「ン、ぁ」  そうして、どんどん服を乱されて、最後の薄い着物の上から、乳首を摘まれた。ペロペロと俺の首筋を舐めながら、右の人差し指と中指で俺の乳首を挟み、弄ぶようにローラがその指を振動させる。するとその箇所から、体の内側に快楽が響き始めた。 「ぁ……あ、ああっ」 「藍円寺、教えてくれ。どのくらいなんだ?」 「あ、ああァ、んっ、あ」  しかしその刺激はもどかしく、俺の陰茎は反応を始めたが、達するには足りない。 「――イキたいか?」 「うん、あ、ああ、ローラ、ああっ」 「だったら、教えてくれ。教えてくれないなら、今日はずーっと、ココだな。ここのマッサージだ。ここだけ触って、ここだけ可愛がってやるよ」 「やああああっ」  ローラがその時、俺の乳頭を唇で挟んで、チロチロと舐め始めた。思わず声をあげて、俺は涙ぐんだ。流れ込んできた刺激で果てるかと思ったが、ギリギリのところでそれは叶わなかった。自然と俺の腰が震える。思わずローラを押し返そうとしたが、体重をかけられて動けなくなった。 「あ、あ、あ」  チロチロと舐めては、ローラが甘噛みをし、それから再び俺の胸の突起を舌先で嬲る。 「ま、待ってくれ、も、もう」 「簡単なことだ。『そうだろ?』、藍円寺は、どのくらい俺のことが好きなのか、それを教えてくれたらいいんだ。ぞれだけだぞ?」  その声に、俺はローラの首に、恐る恐る手を回して、抱きついてみた。ローラの髪から、良い匂いが香ってくる。恥ずかしくて顔を見てはとても言えないと思ったのと、ローラの温度を感じたいと思ったのと、純粋にローラに抱きつきたいという考えと、夢の中だから全部その思いを実行して構わないという心境からだった。 「一番だ」 「一番?」 「そ、その、ァ……っ、せ、世界で一番……ヒ!」  俺が必死で応えた時、ローラが完全に俺の着物を乱し、直接的に陰茎を握り込んだ。 「あああああ」  そのまま激しく扱かれて、あっさりと俺は放った。必死で吐息し呼吸を落ち着ける。すると、俺が出したものを指に絡めとりながら、ローラがニヤリと笑った。 「本当か?」 「う、うん。本当だ」 「じゃ、証明してくれ」 「え?」 「藍円寺からキスしてくれ。世界で一番好きな存在には、キスをする。『そうだろ?』」 「あ、ああ。そうだな」  曖昧模糊とした意識で俺は頷き、ローラの唇に自分の口を近づけた。夢の中なのに緊張したから目を閉じて、触れるだけのキスをする。

ともだちにシェアしよう!