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第31話 【番外】afterwards⑥ …… 限界まで好き

 俺の寝台なのだけれど、いつもとは違うように思える。ベッドに促された俺が静かに座ると、隣に座したヒースが、俺の肩を抱き寄せた。そしてもう一方の手で、俺の顎に触れ、顔をヒースの方に向かせた。 「舌を出せ」  言われた通りにすると、甘く噛まれた。ツキンとその箇所から、不思議な感覚が浮かび上がってくる。 「ン……っ、ぁ……」  小さく震えると、ヒースがより強く俺を抱き寄せた。そして一度顔を離すと、ぐいと俺の顎を持つ手に力を込め、深々と唇を貪ってきた。口腔に侵入してきたヒースの舌が、今度は口の中で俺の舌を絡めとる。その後、歯列をなぞられ、俺は目を閉じた。  前回の啄むようなキスとは全く違う。ゲームの中では、何度もこういうキスをしたはずなのに、俺は緊張していた。けれど感覚は、VRの内部と同じだったから、俺の体は、ヒースのキスを覚えていた。  ……しかし、リアルには、SEXレベルなんてない。なのにヒースは上手すぎる。俺はヒースの胸元の服を握り締め、ヒースが角度を変える度に、必死で息継ぎをした。俺に息継ぎの仕方を教えたのも、ヒースだ。 「ッ……ァ……は、っ」  長いキスを終え、俺はヒースの顔を見上げた。するとヒースが今度は両腕で俺を横から抱きしめ、俺の肩に顎を乗せた。 「好きだ」  耳元で囁かれ、俺はドキリとした。ヒースの吐息が耳に触れる。 「俺もヒースが好きだよ」 「足りないな」 「え?」 「もっともっと俺を好きになれ」  俺はもう限界までヒースの事が好きだと思う。こ、これ以上……? 「好きにさせる。俺の事しか考えられないように」  そう言うと、ヒースが俺を腕から開放した。 「――慣らすのは、バックからの方が負担は少ないだろうな。ベッドに上がれ」 「う、うん」  ど緊張しながら、俺は言われた通りにした。枕のそばのシーツに手をつき、膝を折って臀部を突き出す形だ。ヒースはポケットから、ローションのボトルを取り出した。俺はローションまでは気が回らなかったから、ビクビクしながら首だけでそれを見ていた。  指に液体を絡めたヒースが、俺の菊門に触れる。ひやりとしたから、思わず俺はシーツを握り締めた。ヒースは指先で、俺の窄まりの線をなぞるように指を動かし、最後に中央を優しくつついた。 「少し力を抜け。酷くはしない」 「そう言われても……」 「怖いか?」 「うん」 「嫌か?」 「……ううん。ヒースと、その……一つになりたいというか」 「可愛い事を言うんだな」 「あああ!」  その時、ヒースがぬめる指を一本、俺の中に、一気に突き入れた。突然の事に驚いて、俺は声を上げてしまう。すんなりと入ってきた指は、根元まで入ると、一度動きを止めた。 「ここだったな」 「!」  直後、ヒースが俺の感じる場所を指先で刺激した。 「ァ、っッ、ああ!」  感じる場所は、VRと変わらないらしい……。俺にはそんな知識は無かったが、ヒースは知っていたようだ。何度か指先で刺激される内、俺の陰茎が反応を見せた。声を上げてしまいそうになり、俺は片手で唇を覆う。その時、指が二本に増えた。 「っく、ン……ふ、ッ」  声が堪えられない。俺は必死で吐息し、体にこみ上げてきた熱を逃そうと試みる。  ヒースは今度は、二本の指で、間断なく俺の感じる一点を刺激し始めた。 「ぁ、ァ、ああ!! ひ……ひぁ……ああ……ア!! ダメ……ダメだ……」 「ダメ?」  俺がすすり泣くように言うと、ヒースの指の動きが止まった。突然なくなった刺激に、俺の体がガクガクと震える。違う。気持ち良すぎてダメだと思っただけで、やめて欲しかったわけじゃない。涙ぐみながら、俺はヒースに振り返る。 「ま、待って……出そう」 「そうか」 「あ、あ、出したい……う」 「でも、ダメなんだろう?」 「ッ……ぁ……」 「腰、動いてるぞ」 「!」  ヒースに言われて俺はその事実に気がついた。感じる場所に指を求めて、自然と体が動いてしまったのだ。羞恥に駆られて、俺はギュッと目を閉じる。 「お願いだ、ヒース……や、ッ……あ、あ」 「――きちんと言ってみろ」 「だって、そんな……恥ずかしい……う、ぁ……あ、ッは」 「嫌か? じゃあこのまま待つか」 「やだ、やだ……お願いだから……」 「どうして欲しいのか、それじゃ分からないな」  ヒースは意地悪だ。優しいと思ったのは、気のせいだったのかもしれない。まるでゲームの中でのようなやりとりだ。俺は段々、思考が曖昧になってきた気がした。果てそうな寸前で、震えるしか出来ない。腰が蠢くのも止められない。 「やぁ、あ、あ、足りない……もっとしてくれ」 「ああ」 「ひゃ、っ、うああああ」  俺が思わず哀願すると、ヒースの指が再び動き始めた。俺の中が、ぎゅうぎゅうとヒースの指を締め上げたのが分かる。ヒースは規則正しく俺の前立腺ばかり嬲る。俺の陰茎は、どんどん反り返り、先走りの液がひっきりなしに溢れ始めた。 「これからは、ちゃんと言えるか?」 「うん、うん。言う。だからもう――ああああ!」  その時ヒースが俺の陰茎を握り、扱きあげた。同時に内部の指を強く動かされ、ビクンと俺の体が跳ねる。射精した俺は、必死で息をしながら、ベッドに突っ伏した。ヒースが指を引き抜く。そして俺の呼吸が落ち着くのを待つと、ローションを増量して、今度は三本の指を俺の中に挿入した。バラバラにヒースの指先が動く。俺の内壁が広げられていく。 「現実でも、しっかり俺の形を覚えろ」 「……っ、ヒース」 「なんだ?」 「早く挿れてくれ……っ、ぁ」 「俺だってそうしたい。ただ、まだきついだろ。お前を大切にしたいんだ」  ――それから。  ヒースは丹念に俺の中を解していった。俺はすぐに全身が熱くなり、びっしりと汗をかいた。ゾクゾクする。快楽が何度も背筋を駆け抜けようとする。けれど今度は広げるばかりで、ヒースは俺の感じる場所にはあまり触れてくれない。そうであっても、指が動く度、刺激が内部で響いてくる。  俺の体は、ゲーム内で叩き込まれた快楽を、確かに覚えているみたいだった。  俺は何度も嬌声を飲み込み、それも出来なくなってからは、自分でも信じられないくらい甘い声を上げて、最終的にはもどかしさからボロボロと涙をこぼした。 「あ、あああ、あッ、ぁ……ァ……も、もう良いから、あ」  しかしその後も暫くの間、ヒースは俺の中をほぐしていた。ベッドサイドの目覚まし時計を見たら、一時間半も経過していて、俺はその頃には、もう泣き叫んでいた。 「やぁ、あ、あぁ……ア――っ、あ。ヒース。ヒース……早く」  ローションでもう、俺の中はぐちゃぐちゃだ。背をしならせて、俺は首を振る。髪が揺れた。もう上手く息が出来ない。体が熱い。 「そうだな。そろそろ良いか」  ヒースがそう言った時、俺は何度も何度も頷いた。ヒースは最初に、『酷くしない』と言ったけれど、丁寧すぎて、俺には辛かった……。

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