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第32話 【番外】afterwards⑦ …… 交わる

「あ、あ、あ」  下衣を脱いだヒースの陰茎が、俺の菊門を押し広げた。硬く張り詰めたヒースの楔が、俺の中に挿ってくる。しかしドロドロに解されていたから、すんなりと進んできた。それでも指とは全然違って、やはり大きく――何より、熱い。  交わっている箇所から、体が蕩けてしまいそうになる。俺はギュッとシーツを握り締めて、喉を震わせた。 「あ、っ……ンん」  雁首まで挿りきった時、ヒースが一度動きを止めた。そして俺の腰骨を軽く掴んだ。 「大丈夫か?」 「うん、ぁ、ァ……あ」  ヒースは俺を気遣うように、非常にゆっくりと陰茎を進める。すると内部を擦り上げられるようになり、俺の全身にゾクゾクとした快楽が駆け抜けた。じっくり腰を進めたヒースは、それから再び動きを止めた。 「全部挿った。辛くないか?」 「あ、平気だから……ヒース、動いてくれ……あ、早く……早く、お願い、あ」  もどかしすぎて、自分が何を口走っているのか、俺は上手く理解出来なかった。ヒースが吐息に笑みを乗せた事だけが分かる。ヒースは俺の腰を持ったまま、ゆっくりと腰を揺さぶった。 「ああ!」  それだけで快楽が俺の全身に響いてくる。熱に体を絡め取られた俺は、汗ばんだ体で必死に息をした。思わず舌を出した頃には、俺の頬は快楽由来の涙で濡れていた。  ――もっと激しく貫かれたい。ゲームの中でのように。  そんな欲望が、明確に俺の頭の中に浮かんだ。何も考えられなくなっていくのに、欲しくて欲しくてたまらない。VRの中では強引だったのに、ヒースは今日、俺を壊れ物のように扱う。まるで焦らされているみたいで……と、考えて、俺はハッとした。 「ヒース、待ってくれ、や、焦らさないでくれ」 「――どうしようかな」 「やァ、あああ」  俺はここでやっとヒースの意図に気がついた。ヒースは最初から、俺を焦らす気だったのだ。やっぱり意地悪だ……。 「そんな、あ、やだ、やだ、ダメだ……やぁあ」  俺はボロボロと泣いた。体が熱くて熱くて、もう泣き叫ぶしか出来ない。気持ち良いのに、足りない。 「や、や、早く動いてくれ」 「俺の事以外、考えられなくなったか?」 「そんなの最初から……うああ、ダメ、や、ヤ……あ、っ……」  もう膝を立てていられなくなり、俺はベッドに上半身を預けた。すると、俺の背中にヒースが体重をかけて、身動きを封じてきた。ヒースはその状態で、片手の指を俺の口に入れて舌を嬲り、己の舌では俺の耳の後ろをねっとりと舐めた。 「あ、あ、なんかクる」  内側からせり上がってくる快楽が、俺は怖い。イきそうな状態で、身動きを封じられているから、もう訳が分からなくなってしまった。 「あ、嘘、待って、待ってくれ――っ、ぁ、出る、あ」  俺が泣きながら言ったその時、不意にヒースが体を起こして、一気に激しく動き始めた。その瞬間、俺の頭が真っ白になった。最奥をグっと貫かれた瞬間、俺は目を見開いた。 「ああああああ!」  イった、と、思った。だが、俺の前からは何も出ていない。中だけで果てさせられた俺の全身に、快楽の波が一気に広がった。バチバチと稲妻が走ったようになり、頭が白く染まる。 「うあああ、ア――!!」  絶頂に囚われた俺は、ガクンと体を揺らして、ベッドの上できつく目を閉じる。快楽の波が引かない。漣のように、内側からずっと絶頂感が、俺の足の指先までをも侵食した。  そこでプツンと、俺の理性は途切れ、そのまま俺は意識を落とすように眠ってしまったらしかった。  ――考えても見れば、昨夜は緊張からよく眠れず、朝も早く目覚めてしまった俺だ。  次に目を開けると、もう朝方だった。隣には、寝転がっているヒースがいた。  両肘をシーツにつき、手を頬に当てていたヒースが、不意に俺を見た。 「起きたのか?」 「う……うん。ヒースは寝たのか?」 「ああ。俺はいつも短時間睡眠なんだ」 「そうなんだ」  頷きつつ、俺はヒースの顔を見た瞬間、昨夜の己の痴態を思い出し、真っ赤になってしまった。どんな顔をしていれば良いのか、よく分からない。 「可愛かった」 「……ヒースは意地悪だった」 「知ってただろ?」  ヒースが小さく吹き出したのを見て、俺は思わず枕に額を押し付ける。ヒースが無性に恰好良く見えるから困る。ヒースの声も、空気感も、全部好きすぎる。 「俺を可愛いなんていうのは、ヒースだけだ」 「そうなのか?」 「ああ。言われた事がない」 「お前は美人だとゲームでは評判だったけどな」 「へ? そうなのか? それも聞いた事ないけどな」  顔を上げて、俺はヒースを見た。するとヒースが柔和な笑みを浮かべていた。そして横から俺を抱きすくめた。ヒースの腕の中に収まった俺は、腕枕をされる形になりながら、ヒースの顔を見る。 「もう少し眠れ。俺ももう一度寝る」 「う、うん」 「朝になったら、出かける約束だろ?」 「あ、そうだな」  俺は頷きつつ――自分の体が綺麗になっている事に気がついた。ヒースが処理をしてくれたらしい。やっぱり、優しいのかもしれない。  こうして俺は再び微睡んだ。ヒースの体温が、俺は好きだ。  明日は、モノレールの窓から見た、イルミネーションに彩られた公園を見に行く事になっている。デートだ。そう思えば、どことなく気恥ずかしい。そんな事を考えながら、うとうとしていた。  その内に、本格的に眠った俺は、夢を見た。  それは――ヒースと初めて出会った時の夢だった。

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