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第35話 【番外】afterwards⑩ …… 酒
「夜は居酒屋で良いか?」
俺が聞くと、ヒースが俺の腕をひいた。
「酒が飲みたいのか?」
「なんというか……」
率直に言って、冷蔵庫の中身が寂しいのである。秘技である鍋は昨日食べてしまった。
「俺は早くネジの家に行きたいが」
歩き疲れたのだろうか。そうかもしれないと考えて、俺は静かに頷いた。
「酒なら買えば良い」
「それなら、スーパーに行こう」
「ああ。俺が作る」
「いや、いいよ。俺がやる――そ、それとも、不味かったか? 昨日の鍋……」
「美味しかったし温まった。そうじゃない、ネジにやらせてばかりなのが気になるだけだ」
「そういうもんか? じゃあ、そうだ。一緒に作ろう」
俺が提案すると、ヒースが両頬を持ち上げて、首を縦に振った。リアルでの方が、ヒースは笑うようになったと思う。リアルでの初対面の時こそ違ったが、今では、ゲームの中での最後の頃より、よく笑っている気がする。
こうしてスーパーに向かい、二人で適当に食べたいものをカゴに入れていった。結果、無秩序な感じになってしまった。最後に酒類コーナーへと行く。俺は、度数が弱い缶チューハイを三本カゴに入れた。そしてヒースを見ると、ジンの瓶の前にいた。
「え? そんなに飲むのか?」
「いいや。これからネジの家にはよく来るつもりだから、置いておこうと思ってな」
するりと言われて、俺は嬉しくなってしまった。また会えるというのが嬉しいのだ。ヒースはジンとウォッカのボトル、カルーアのボトルなどをカゴに入れた。他に割りモノや角を曲がった場所にあった果実も買い始めたのを見て、俺はちょっと焦った。
「こんなに買ったら、俺、割り勘ができないぞ」
「俺が出す」
「それはさすがに……」
いくらヒースがセレブといえど、おごってもらうなんて申し訳無さ過ぎる。
「宿泊代だと思ってくれ」
……甘えてしまって良いのだろうか。ぐるぐると俺が悩んでいると、自動ドローンレジにヒースが向かって歩きだした。焦って追いかけた頃には、ヒースは会計を済ませていた。先程までは俺と同じ速度だったのに、レジに向かう足は早くて、俺は小走りになってしまったものである。どうやら俺に合わせて歩いていてくれたようだ。ま、まぁ、もとの身長差があるから不思議ではないか……。
結局ヒースに買ってもらった後、二人で俺の家へと戻った。幸いコップはあったので、それと、マドラーの代わりの箸を一本、俺はヒースに渡した。そして自分ではチューハイを手にする。ヒースはキッチンでライムを切ると、何やらカクテルを自作していた。そしてチラリと俺を見る。
「ここにあるグラスも使っていいか?」
「うん」
俺が頷くと、今度はカルーアミルクも作った。そしてチューハイの缶をあける前だった俺の正面に、カルーアミルクを置いた。
「甘いのが好きなんだろ?」
「好きだけど、え? 飲んで良いのか?」
「ああ」
嬉しくなってしまった。俺がチューハイを冷蔵庫にしまいにいくと、ヒースがその間に、テーブルの上に、買ってきたつまみを並べた。居酒屋を提案した俺だったが、こうやって二人っきりになれるのは、本当に嬉しい。それから二人で乾杯をした。
宅飲みなんて、ナチとしかした事がない。大学には他の友人もいるけれど、家に招くほど親しいのはナチだけだ。
「なぁネジ」
「ん? 味なら、すごく美味しい」
「そうじゃない。どうして俺が、早く家に行きたいといったか分かってるのか?」
「へ?」
「今夜もお前が欲しいからだ」
率直なヒースの言葉に、俺はなんと返すべきか思案しながらコップを傾けた。
それから俺達は暫く飲んでいたのだが、ヒースがシャワーを浴びに行くというので、そこで終わりになった。俺は、俺の家にヒースがボトルをキープしていくという事実が嬉しくて、キッチンの棚を片付けて待っていた。
そしてヒースが上がってから、俺は言った。
「服隠したりしないでくれ」
「脱がせて欲しいのか?」
「べ、別にそういうんじゃなく……ヒースがその……ヤりたいんなら、ちゃんと俺は脱ぐ」
「お前は乗り気じゃないのか?」
「う」
正直、乗り気だと思う。俺もヒースと一つになりたい。
「ヒースさえ良ければ、その……」
「俺がネジを求めない日なんてない。覚えておけ」
赤面しそうになったので、俺は浴室に逃げた。そして念入りに体を洗ってしまった。
入浴後、俺はバスタオルで体を拭きながら、服がある事を確認した。
そうして部屋に戻ると、ヒースが寝台に座っていた。目が合う。
――こうして、この日も夜が始まった。
「ぅ……ァ、あ」
ローションをまぶした指で慣らされた後、本日はヒースがすぐに挿入した。すんなりと入ってきたのは、昨日の感覚がまだ残っていたからなんじゃないかと思う。昨晩だけでも、かなり俺の体は開かれていた。
「あ、ア……っ、ッ」
のしかかってきたヒースに、穏やかに貫かれている現在、昨日よりはずっと余裕がある。いいや、体が熱いのは変わらないから、余裕があるというのはおかしいのかもしれない。ただ、真正面にあるヒースの顔をじっと見る事が出来るというだけだ。尤も、昨日は今日みたいな正常位ではなくて、バックだったわけだが……。
「ンん……っ、は……ァ、ああ」
緩慢に抽挿される度、俺の口からは嬌声が零れる。ヒースの腹部に俺の陰茎が擦れていて、先走りの液が先端からはタラタラと溢れている。
その時、ヒースが俺の太ももを大きく持ち上げて、腰の動きを早めた。
「あ、あ、ああ――っ、ぅ、ア!!」
俺が喉を震わせる。ヒースの瞳が獰猛に変わったのは、その時の事だった。
「ひゃ、ッ!!」
ヒースが正面から、俺を抱きしめるようにしたのだ。俺の太ももが宙に浮く。グッと根元まで挿入され、ヒースに乳首を吸われた。
「あ、あ、ああああ!!」
身動きができなくなった俺の太ももが、ヒースの太ももと腕の間に挟まる。感じる場所を激しく何度も貫かれ、思わず俺は手でヒースを押し返そうとした。すると手首を掴まれ、シーツに縫い付けられる。
「あ、ア――激し、っ!!」
その状態で、今度はヒースにキスをされた。深々と貪られると、思考がふわふわとし始める。ギュッと俺が目を閉じ、背をしならせた時、少し出来たベッドとの間に、ヒースが手を回し、俺の体を抱きしめるようにした。
「あ、あ、嘘、あア――!!」
ヒースは俺に覆いかぶさって、腰を丸めながら、激しく打ち付けてくる。強制的に快楽を煽られる形になって、俺は怖くなって思わずヒースに抱きついた。俺は、ゲームの中でもこの体位をされた事がある。種付けプレスというらしい。
「あ――!! う、うあ、ああああ!」
ローションがぐちゃりと音を立てる。水音が激しくなった時、ヒースの巨大な陰茎が、精液を俺の中に放った。ビクンと俺の体が跳ねる。俺もまた、中だけで果てていた。ビクビクとヒースの陰茎は脈打っていて、長々と射精しているのが分かった。
それからヒースは、少しの間動くのをやめていたのだが――俺の全身から快楽の波が少し引いた時、俺の内部に挿入したままで、再び硬度を取り戻した。そうして、その体位のままで、再び激しく抽挿を始めた。俺は絶頂感が完全に引いたわけでは無い状態で、再び動かれたものだから、快楽で頭が真っ白になってしまい、むせび泣いた。
結合箇所からは、ドロドロとヒースが放ったものが垂れてくるのが分かる。
押さえ込まれている状態の俺は、ただ受け入れるしかできない。ローションだけでなく、ヒースの放ったもので、俺の中はもうぐちゃぐちゃで、ドロドロで、どんどんヒースの動きがスムーズになっていく。
この夜、ヒースは俺の中に、何度も吐精した。俺は何度もドライでイかされた。
漸くヒースが陰茎を引き抜いた時には、大量の白液が俺の中からコポと音を立てて溢れた。それを自覚した後、俺は意識を手放すように、眠ってしまったのだった。
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