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【R-18】悪夢の呪縛 -2

 もつれ込んだのは、実習棟のトイレの個室だった。  放課後の実習棟は、確かに誰も寄り付かないけれど。だからってハジメテがトイレって、結局青姦と変わんないだろ、なんて思ったのに。  とん、と体を押されて、蓋が閉まったままの便座によろめくみたいに座ったら、 「口、あけて」 「はぁ!? ----っ」  何言ってんだ、と見上げた先に、猛々しいソレを、ぼろん、と剥き出されて体温が上がる。  トイレの臭気に混じる、強烈な雄(シュウ)の匂い。  何も出来ずに固まったままでいたら、何かに急かされたみたいなシュウが、オレの頭を強引に自分の方へ引き寄せて。 「ちょっ----っぅ」 「舐めて。帰れないから、このまま」 「ま、」 「舐めろって」 「ぐっ」  薄く開いていた唇を強引に割って入ってきた、熱い塊。  反射的に吐きそうになったのに、頭を押さえたままのシュウの手に邪魔される。  半泣きの目で睨み付けたのに、シュウはニヤリと、今までに見たことがないような残虐な目で笑った。 「一回ダしたら帰れるから。イかせて、口で」 「----ッ」  ぐぃ、と奥を突かれて。込み上げてくる吐き気を必死で堪えながら、結局滲んだ生理的で屈辱的な涙を、隠せないままシュウを睨んだのに。 「こんなにしたの、ヨウだから。責任とってよ」  にこり、と。何かがとり憑いたままの笑顔が呟いて。  乱暴な腰使いで喉と口を犯されながら、あの頃繰り返し見た夢を思い出して  ----震えたのは多分。 「ふぁっ……っは、ぁ」  結局、一回出したくらいじゃ治まらなかった熱を、持て余して触れたヨウの体は、熱く火照って敏感に跳ねた。  受け止めきれなかったオレの白濁でユニフォームを汚したヨウは、とんでもなく淫らで、とんでもなく愛おしい。  荒い息をする唇も、紅い顔も、潤んだ目も。  それから。  隠しきれずに膨らんだ、そこも。 「も、むり」 「ッ」  辿々しく紡いだ日本語は、正しくヨウに伝わっただろうか。  我慢できずに、無防備にオレを誘う紅く濡れた唇を塞いで、オレの味がする舌を絡めとる。  きゅう、とオレの胸にすがってユニフォームを握りしめてくるヨウの手が可愛くて、角度を変えて何度も何度も口の中を探った。 「ふ……っ、……しゅ、ぅ」  声は。  オレを求めていると、思うのがオレの幻想でも、構わなかった。  掻き抱いた細い体。  押し付けた熱に、押し付け返された熱。  ユニフォームの裾から手を入れても、ヨウはもう、止めようとはしなかったし 「しゅう……っ」  オレを呼ぶ声は欲に濡れて、唇をねだった唇が、オレを求めていたから。  狭くて臭い個室で、色んな所にガツンガツンぶつかりながら、だけどとにかく求め合うままに身体中を探りあった。  夢で見た時、一応オレは横になっていたから、たぶんちゃんとした場所でシテたんだろう。  なのにどうして。  想い合ってるって分かって初めてのセックスが、男子トイレの個室なんだろう。  そんな風に嗤いながら、だけどあちこちに触れてくるシュウの指先や手のひらや、唇や舌に煽られっぱなしで。声がひっきりなしに零れるのを、堪えるつもりでシュウの肩や腕に噛みつくしかなくて。  シュウが自分の唾液で濡らした指先で後ろに触れてくる頃には、中途半端に脱がされたユニフォームは、もう自分のともシュウのともつかない白濁でどろどろに汚れていた。 「ぅあ、ぁッ……しゅっ、まっ、て……ッ」 「待てない」 「しゅ」 「待たない」 「やっ、めぁ」 「だってもう、待てない」  遠慮のない指先が埋まって、思わず息を止める。 「力抜いて」 「むり、ぃ」 「無理じゃない、抜いて」 「むりだ、ぁ、ってぇ」 「抜いてって。コレ、イレんだから」 「ぃゃっ」  あれからシュウだって一回はダしてるはずなのに。  フェラを強要された時と変わらない大きさのソレを、見せびらかされて腰が引ける。 「もう待てないから。イレるから、絶対」 「しゅ、う……」 「我慢できない。散々焦らされたんだから。我慢しない」 「しゅ」 「そのかわり」 「……?」 「絶対。傷つけたくないから。抜いて、力」 「しゅう……」 「抜いて。頼むから」  ヨウ、と。優しい声が囁いて、優しい唇が頬に触れて。  ちゅ、と音を立てて柔らかく、顔中に降ってきた唇が、最後にオレの唇を柔らかく食んで、吸って、甘噛みする。 「イレさせて」  これ、と。  シュウの空いてる方の手がオレの手を掴んで、熱く反り返るソレに触れさせてくる。 「あつ……っ」  譫言みたいに呟いた声に、柔らかく笑ったシュウが耳元。わざと唇を近付けて、吐息が掠める距離で囁いてくる。 「イレさせて」 「っぁ、ぁ……っあ」  体が、また、震えて。  震えた手のひらが、勝手にシュウの熱をやわやわと握りこんで。  恐る恐る見つめた先で、シュウが嬉しそうに目を細めるから。 「は、ぁ……ッ、シュウっ」  ねだる声が漏れて、腰が誘うように揺れる。  それを見逃さなかったシュウが、まずは指を1本、オレの中に埋め込んで。 「ぅあぁッ、ッァ」 「入った。奥まで」 「わか、って、る……から、言う、な」 「なんで? だって、オレの指が、ヨウの中に入ってるのに」 「だ、からァ」 「夢みたいだ」  熱に浮かされたみたいな、ふわふわした不安定な声が呟くから。  後ろの違和感そっちのけで、そっと顔をあげる。 「しゅ、う……?」 「……----ヨウ。言って。オレのこと欲しいって言って。オレのコレ、イレて欲しいって言って」  泣きそうに歪んだ顔は、たぶん。オレ達が共有してる、あの悪夢を思い出してるから。  泣きたくなるくらい----悔しくなって。  シュウの頬を両手で挟んで、ぐきっと音がしそうなくらい、無理やり引っ張って唇を塞ぐ。  驚いて目を見張ったシュウの、唇を甘く噛んで。舌で舌を誘って、差し出された舌を強く吸い上げたら、喉を鳴らして唾液を飲み下す。  触れた時の強引さと同じくらい唐突に唇を離して、情けない顔のまま驚いてるシュウを、わざと怒った顔で睨み付けてやる。 「ヨウ……?」 「バカ。今さらあんな夢のこと思い出して、恐がってんなよ。オレのが怖いし痛いんだからな」 「ヨウ……」 「言ったじゃん。シュウのこと好きだって。オレだってシュウのこと、ちゃんと欲しいよ。……シュウの全部、オレにくれないなら、----別れてやるからな」 「ヨウ」 「いいのか」 「嫌だ」 「だったら」  オレにくれよ。  きゅっと、剥き出しになったままの熱いソレを、軽く握って笑う。 「全部、ちゃんと、欲しいから。恐いけど、恐くないから。お前なら、恐くないから」 「----っぁ、ンだこれ」 「ぁ、……っ、ア、ぁ」 「ンだよ、これっ」  潤滑油(ローション)もない。ゴムもない。  家にならちゃんと準備しておいたのに、とか。せめて制服だったら財布にゴムを入れてあったのに、とか。  色々後悔しながら、だけどなんとか解して、結局ナマで滑り込んだそこは。  不思議な柔らかさでオレを包むくせに、熱くてキツくて、ちょっと動いただけでダしてしまいそうなほどに気持ち良くて。  狭いトイレで、一番マシな格好で出来そうと考えついて、便座を跨ぐように足を開かせて、トイレのタンクに手を付かせた立ちバックの。無防備なヨウの背中に思わず顔を押し付ける。 「ンッ、やぁ、さわんな、ぁ」 「だって、こんなん……気持ちよすぎる」  すり、と滑らかな背中に顔を擦り付けたら、さっきよりも切羽詰まった情けない声が悲鳴をあげて 「ばっ……だ、っから、背中っ……やめっ」  ひくひくと中が震えて、パタパタと白濁が飛び散った。 「ぇ? ヨウ?」 「るせっ……見んなよっ」  真っ赤になった耳。  荒い息遣い。  カタカタ震える、力の入らなくなった足。 「…………ヨウ」  可愛くて愛しくて、めちゃくちゃにしたいのに大事にしたくて、苛めたくて泣かせたくて、だけど笑って欲しくて。 「ヨウ……----ヨウ」  声が。オレのじゃないみたいに、気持ち悪いくらいに優しい。  ふぁ、と。振り向いて泣いた目が、オレを見つめて----笑う。 「シュウ」  呼ばれた、その名前に。  凶暴で、爆発的な。  何かがオレを貫いて。 「----っ、ごめっ」 「っ!?」  中で、暴発したオレの熱が。  ヨウの中を侵していく。  抜かなきゃ。だけど気持ちいい。オレのが。----オレのが、ヨウの、中、を。拡がってく。 「----ヨウっ」 「っやぁッ」  訳が分からなくなった。  オレのが、ヨウの中を侵して、侵食して、染めてく。  ヨウが、オレに、染まってく。  一気に取り戻した熱で、奥を突いて掻き混ぜて。もっともっと奥を探りたくて、力の抜けきったヨウを力一杯抱き締めて、奥へ奥へ腰を進める。 「しゅ……っ、こ、わ……れるッ」 「……」 「こわれ、る、からぁ、ァッ」 「----壊れて」 「しゅ……ぅ?」 「壊れて。オレだけのになって」 「しゅ……?」 「誰にも笑わないで話さないで触らないでどこにも行かないで」 「ぁ……?」 「オレだけのにする」 「しゅッ、ぅアッ」 「壊れて」  がくがく揺れるヨウの体を、折る勢いで抱き締めて。  奥を抉るみたいに突き上げながら。  頬を伝っていったのが何かなんて、狂ったオレには分かるハズもなかった。 「ぅ、ぁ……あ、あ……」  がくがく揺さぶられて、上手く息が出来ない。  タンクに手を突いていたはずなのに、羽交い締めされるみたいにシュウに抱き締められてからは、掴まる場所もなくて。ただ突き上げられるままに揺れて、抉られる度に悲鳴をあげた。  吐きそうなくらいの強い揺さぶりと突き上げに、壊れると叫ぶつもりの声は、もう言葉を象らずに。  意味不明な悲鳴が、漏れるだけだ。 「しゅ、う……ッ……しゅ……」  たすけて、と。切れ切れに呟いた声を、聞いたのか聞いてないのか。  ぎゅう、と。羽交い締める腕に力が込もって、また息が止まる。 「しゅ……」  不自由に腕を動かして、震える手でシュウの腕に触れる。 「し、んじゃう、か、ら……」 「ヨウ」 「し、じゃ……」 「ヨウ」 「しゅ」 「----助けて」  泣いて震えた声が呻いた一言に、笑う。  助けて欲しいのは、オレの方だ。  ----なのに。 「っぁ……く、なよ……」  泣くなよと、オロオロしながら呟いたオレは、いっそ滑稽なほどに狼狽えていたと思う。  壊されそうになってるのはオレの方なのに。串刺しにされたまま、不自由に縛られたまま、だけど撫でたシュウの腕。  それに気付いたのか、ようやく奥を抉っていた熱が動きをとめる。 「な、……く、なよ……シュウ」 「…………壊したくない」 「しゅう……?」 「でもオレだけのにしたい」 「しゅ」 「ぅしたら、オレのになる?」 「……」 「……どうしたら、オレだけのになる……?」  泣く声が背中に響く。  オレを羽交い締める腕は、震えてるのに力をなくさない。 「オレの……オレだけのヨウになって」 「ぁ……」 「いつも触りたい。いつでもヨウに触りたい。もっと……もっともっと、もっと----っ」 「----っ、シュウ!」 「ッ」  もっと、を繰り返すシュウの腕に爪を立てて。  ようやく止まった声に、小さく息をはく。 「腕、外せ」 「いやだ」 「外せって」 「いやだっ」 「じゃなきゃお前のこと抱き締めらんないんだから外せってっ」 「…………よう?」 「外せ、あと、抜け」 「よう」 「何回も言わせんな。外して抜け。後で何回でもイレさせてやる」 「…………」  渋々の体で腕が外れて、ぬるり、と抜けていった熱。淋しいと思ったのは脇において、ボタボタと内腿を伝う濡れた感触に身震いしながら。  狭い個室で、ガタガタになった体で苦労して振り返って、がしっ、と泣きすぎてベタベタになった頬を両側から挟む。 「いいか、一回しか言わないから、よく聞いとけ」 「……」  怯んだ目を、真っ直ぐに見つめたら、躊躇うことなく言い放つ。 「壊したくらいでお前のになんかならない」 「よう……」  ざっくり傷付いた顔するシュウを、だけど無視して続ける。 「壊されたくらいで、お前のになんか、なってやらない」 「よ……」 「刻め。いくらでも何回でも。お前のもんだって、何百回でも何千回でも、オレに刻め。そうじゃなきゃ、お前のになんて、なってやらない」  何か言いかけたシュウを遮って伝える想いに、気付いてくれるだろうかと、祈りをこめながら。  きっと普段なら恥ずかしくて照れ臭くて言えないであろう言葉を、真っ直ぐに届ける。 「----一生、かけて刻めよ、オレに」 「……よう」 「一生かけて刻むんだったら、オレのにしてやる」  べそべその泣き顔が、また涙に歪む。 「よう……っ……ようっ」 「大事にしろ。壊すだけじゃオレはお前のもんにならないんだから。ここは、壊さなくてもお前のもんだから。ちゃんと、顔、見て----あ、いせよ、ばーか」  少しだけ背伸びして、ほんの少し力をなくした、だけどまだ十分に熱いソレに手を添えて。自ら後ろに先端を宛てたら、ずるり、と。体重をのせて体を沈めて、自ら串刺しにされにいく。  詰まった息を無理やり吐きながら、笑って言ってやったのに。  唇を噛んでボロボロ泣きながら何度も頷いたシュウは、オレにぎこちなく笑い返してまた泣いたから。 「泣くな、シュウ」  しょっぱい頬や唇を何度も食んで、ぎゅっとしがみついてくる体を、キツく抱き締め返した。  狭くてキツくて、だけど熱いそこに自ら迎え入れてくれたヨウの、柔らかな締め付けと弛緩に刺激されて、強欲に中で膨らんだオレを。感じて、くしゃっと笑ったヨウは、オレの髪を掻き回すみたいに撫でてくれた。 「足りないよな、シュウだって」 「……たり、ない」 「オレだって足りないよ。だって全然、愛じゃなかった」 「ごめ」  くしゅ、と哀しそうに笑われて、慌てて謝ろうとしたのに。  ヨウは、オレの声に被せるみたいに言葉を続ける。 「----不安になったら、ちゃんと言え。足りなかったら、ちゃんと言え。……お前が不安ならオレだって不安だし、お前が足りてないなら、オレだって足りてないんだから」 「よう……」 「もう二度と。あんな夢に囚われんな。オレは、お前のことちゃんと好きなんだから、疑うな」 「よう……」 「オレは。お前が思ってるよりずっと、お前のこと好きなんだから、信じろ」  うん、と頷いて、立ったままの辛そうな体をそっと押して、便座の上に寝かせながら、頭を打たないように腕で抱え込む。 「無茶してごめ----」 「いいから。次やったらぶっ飛ばすけど、今日は多目に見てやるから----最後まで、しよう」  真っ赤な顔が、そっぽ向いて。だけど照れ臭く笑った目が、ちら、とオレを捉えてはにかむ。  そんな可愛い仕草をオレの腕の中でするヨウが、可愛すぎて愛しくて。  中でまた大きくなった自分を、にちにちと、さっきまでより小さく小刻みに動かす。  小刻みの振動に合わせて漏れる声を、今さら堪えるヨウは、オレの肩や鎖骨辺りに容赦なく噛みついて、歯形を残していく。 「よう、痛い」 「うるさい」 「うるさくない」 「----わざとだよ」 「わざと?」 「シュウはどうせ、すぐ不安になるから。見て思い出せ。どんだけ、オレに愛されてるか」 「……」 「思いしれ」  がぷ、と。  一際強く噛まれて呻きながら、抱えた首の裏を強く吸い上げる。 「ばっ、そこっ、みえるッ」 「見せびらかすんだから、ここでいいんだよ」  にこり、と。ようやく笑って見せたら。  また呆れた顔したヨウが、だけど盛大な溜め息の後で笑った。 「後悔しろよ」 「ぇ? ----つぅっ」  *****  あちこち噛み痕だらけになった体を、汚れたユニフォームで隠しながら、こそこそ部室に向かう。  日はとっくにとっぷり暮れていて、いつも通りならたぶん、部員はみんな帰っているはずの時間だ。  一応、水泳部のシャワーを勝手に拝借して体についていた諸々は流したし掻き出したけれど、ユニフォームを洗ってしまえば着替えがない窮地に、仕方なく汚れたままでこそこそ歩くことになった。 「元はといえば、全然変わんないヨウが悪い」 「お互い様じゃん」  シュウだって連絡くれなかっただろ、と唇を尖らせてフテるヨウは、結局可愛いから反則だ。  あんなにも堕ちていた気分は、ヨウの言葉に掬い上げられて、今はどうにか平穏だから。そんな可愛い仕草にいちいちドギマギするのがやっかいで----だけど幸せで嬉しいんだから、しょうがない。  上手く歩けないヨウに肩を貸している今、ヨウにこの高鳴りが伝わっていませんようにと祈るばかりだ。 「でもさぁ」 「んー?」 「…………淋しかった、今日の昼」 「ぇ?」  唐突な言葉に驚いて立ち止まったら、いてて、とぼやいて顔をしかめたヨウが、だけどオレの疑問の顔に答えを投げてくれる。 「だからぁ。シュウがさ、機嫌悪くて一人で弁当食べて、予鈴まで一人で過ごしてさ。淋しかった」 「ヨウ……」  じわり、と。また泣きそうになっていたのに。  ヨウは、もごもごと何かを口ごもった後に、ふぃ、とオレから視線を恥ずかしそうに逸らした。 「だしさ。今日、体痛いし自転車で帰れると思えないからさ。電車で帰るけどさ」 「うん……?」 「…………一緒に、帰る?」 「ぇ?」 「自転車、置いてくことになるけどさ。……一緒、帰る? ……んでさ……」 「うん……?」 「手……とか……誰も、いなかったらだけどさ……つないで、かえる?」 「よう……」 「……明日の、朝、とか……いっしょ、いく?」  真っ赤な顔が、俯くから。真っ赤な耳が目立つ。  きゅう、と。オレのユニフォームの端っこを掴む手が、恥ずかしさに震えるのが見えたら、堪らなくなった。 「なんでヨウはいちいち可愛いことするかな」 「かわっ!?」 「また襲ってもいいの?」 「いくないっ!!」  バタバタ暴れる体を腕の中に閉じ込めて、真っ赤な耳に囁く。 「帰る。一緒に。手、繋いで帰る」 「…………誰もいなかったらだかんな」 「いやだ。手ぇ繋ぐ」 「駄々っ子か」 「駄々っ子でいい。……ずっと、そうしたかったのに、我慢してた」 「……」 「我慢してたんだ」 「……わかったよ」  呆れたみたいに溜め息ついた癖に、ヨウの唇の端っこは、微妙に歪んで笑っている。 「とっとと着替えて帰ろう。腹減った」  ぱん、と軽く肩を叩かれたのを合図に抱き締めていた腕をほどいて、ヨウの腕を肩に担ぎ直す。 「なぁ」 「ん?」  不意に固い声が聞こえて。肩を貸しているせいでいつもより随分近い距離にあるヨウの顔を見つめたら。  やけに真面目腐った心配顔が、オレを真っ直ぐに見つめてくれる。 「……もうさ。ホントに……忘れていいから」 「ぇ?」 「夢のこと」 「……」 「あんなんただの夢だし。オレは……」 「……うん?」 「好きだから」 「……ヨウ……」  照れ臭そうに笑ったヨウは、だけど真っ直ぐオレを見つめたままで。 「好きだから」  真っ直ぐな言葉と目に貫かれて、ようやく真っ直ぐ笑い返した。 「オレも大好き」

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