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第8話
「ただいまー。」
午前中の講義を終え、サンドイッチとソフトドリンクを買って家に帰る。
静かすぎて焦ったが、零がリビングから覗くように玄関を見ていたので安心した。
「………おかえり。」
「ただいま。腹減ったろ?BLTサンドか照り焼き、どっちがいい?」
「びーえるてぃって何…?」
「ベーコンとレタスとトマトが入ったやつ。」
「じゃあ、それにする…。」
零はBLTサンドとオレンジジュースを選んで、俺が食べるのを確認してから食べ始めた。
まだ遠慮してんな…。
当たり前か。
「午前中、何してたの?」
「………ぼぉっとしてた…。」
「それ、暇じゃね?」
プッ…と吹き出すと、零は不思議そうに首を傾げた。
なんかこいつ、変なの。
変だけど、おもしろい。
「零はなんかしたいことないの?」
「……したい、こと?」
「うん。学校行きたいとか、バイトしたいとか、友達が欲しいとか。」
「ん………、あんまり…。」
「今まで楽しいって思ったのは、何がある?」
「んー………」
無欲というか、自分に無頓着というか。
そもそも何故こんなにも無口なのか。
感情もあまり表に出さない。
今までに会ったことないタイプだ。
けど、不思議と居心地は悪くない。
「檸檬は…?」
「え、俺?俺は最近だと大学とバイトが楽しいかな。」
「…そう、なんだ……。」
「零も大学通うのは難しいかもだけど、バイトならできんじゃね?ほら、俺のバイト先、昨日のとこだし。」
「泰さん…?」
「そうそう。バーだから未成年がなんだとか言いそうだけど。俺がお願いしてみるし、裏方くらいならさせてくれんじゃね?」
零に何か楽しいことを教えてやりたい。
裏方が楽しいかどうかは置いといて、店長以外にスタッフもいるし、人と関わる機会くらい持った方がいいだろ。
零は少し考え込んで、俺に尋ねた。
「バイトしたら、檸檬は嬉しい…?」
「まぁ、バイト先一緒なら安心はするけど。」
「じゃあ、する。」
今のどこで決心がついたのか、零はふんすとやる気に満ちた目で俺を見つめた。
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