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第10話
「………ってのが、そいつを雇う条件。それでいいなら、そこにサインしろ。」
店長が出した勤務条件。
①勤務時間は必ず俺も勤務する事。
俺が出した条件だし文句はない。人見知りな面もあるから、俺がフォローするって理由らしい。
②お酒を出す時間には絶対に表に出ないこと。
ランチタイムならいいってことだと思うから、俺もランチタイムのシフトを増やせばいい話だ。
③給料は若干低めに設定。
面接なしの特別対応だし、夜の繁盛する時間に表に出れないから仕方ない。けど、零がこれをどう思うかは別。
「零、どう?嫌なら断っていいよ。」
引っ掛かるところは給料面くらいだと思うけど、まぁお金は大事だし、あとは零の決める事だ。
零に尋ねると、首を縦に振って、契約書にサインを交わした。
「よし、成立だ。」
「やったな、零!」
「……頑張る。」
さっそく店長から支給されたシャツに袖を通し、零は俺と同じバイトの制服に着替えた。
「似合う……?」
「うん、似合ってるよ。」
結構シュッとした制服だから、零の体のラインがよく目立つ。
これは夜の表には絶対立たせられないな…。
変な客や酔っ払いなんかに目をつけられたら、絶対お触りの対象になる。
「檸檬、零に裏方業務教えてやってくれ。」
「わかりました。零、こっち来て。」
「お疲れ様です〜。」
零に仕事を教え始めようとした瞬間、俺と同じシフトだった女性スタッフが現れて、零を見て目を輝かせた。
「えっっ!!何、この子!?可愛い!!新しい子?え?名前は?女の子??」
「………っ!」
「あー、先輩、落ち着いて……。」
先輩のギラギラした目と興奮した声と圧力に、零は驚いて口を噤んだ。
先輩を落ち着かせて、俺が代わりに零を紹介する。
「この子は月城 零くん。今日からうちで働くことになりました。ギリ未成年なので、裏方とランチ専門で。」
「えーー!じゃあ私あんまり会えないって事?!」
「そうですね…。」
「残念〜!じゃあ歓迎会は私のシフトとズラしてね?ね!お願い!」
先輩は夜のホール専門だから、零とシフトが重なることはあっても、あまり関わることはないだろう。
まぁ少しずつ色んな人と交流は持って欲しいけど、いきなりこの先輩のテンションは厳しいものがあるだろうしな…。
「徐々に、ですね。」
「よろしくね!じゃあ私は表の準備してきまーす!」
先輩がホールに行ったことを確認し、俺は零に裏方業務の続きを教え始めた。
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