10 / 24

第10話

「………ってのが、そいつを雇う条件。それでいいなら、そこにサインしろ。」 店長が出した勤務条件。 ①勤務時間は必ず俺も勤務する事。 俺が出した条件だし文句はない。人見知りな面もあるから、俺がフォローするって理由らしい。 ②お酒を出す時間には絶対に表に出ないこと。 ランチタイムならいいってことだと思うから、俺もランチタイムのシフトを増やせばいい話だ。 ③給料は若干低めに設定。 面接なしの特別対応だし、夜の繁盛する時間に表に出れないから仕方ない。けど、零がこれをどう思うかは別。 「零、どう?嫌なら断っていいよ。」 引っ掛かるところは給料面くらいだと思うけど、まぁお金は大事だし、あとは零の決める事だ。 零に尋ねると、首を縦に振って、契約書にサインを交わした。 「よし、成立だ。」 「やったな、零!」 「……頑張る。」 さっそく店長から支給されたシャツに袖を通し、零は俺と同じバイトの制服に着替えた。 「似合う……?」 「うん、似合ってるよ。」 結構シュッとした制服だから、零の体のラインがよく目立つ。 これは夜の表には絶対立たせられないな…。 変な客や酔っ払いなんかに目をつけられたら、絶対お触りの対象になる。 「檸檬、零に裏方業務教えてやってくれ。」 「わかりました。零、こっち来て。」 「お疲れ様です〜。」 零に仕事を教え始めようとした瞬間、俺と同じシフトだった女性スタッフが現れて、零を見て目を輝かせた。 「えっっ!!何、この子!?可愛い!!新しい子?え?名前は?女の子??」 「………っ!」 「あー、先輩、落ち着いて……。」 先輩のギラギラした目と興奮した声と圧力に、零は驚いて口を噤んだ。 先輩を落ち着かせて、俺が代わりに零を紹介する。 「この子は月城 零くん。今日からうちで働くことになりました。ギリ未成年なので、裏方とランチ専門で。」 「えーー!じゃあ私あんまり会えないって事?!」 「そうですね…。」 「残念〜!じゃあ歓迎会は私のシフトとズラしてね?ね!お願い!」 先輩は夜のホール専門だから、零とシフトが重なることはあっても、あまり関わることはないだろう。 まぁ少しずつ色んな人と交流は持って欲しいけど、いきなりこの先輩のテンションは厳しいものがあるだろうしな…。 「徐々に、ですね。」 「よろしくね!じゃあ私は表の準備してきまーす!」 先輩がホールに行ったことを確認し、俺は零に裏方業務の続きを教え始めた。

ともだちにシェアしよう!