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第12話
零と暮らし始めて、一週間が経った。
バイトに慣れ始め、同時に人と話すことにも少しずつ慣れ始めたようだ。
家で俺と二人きりの時は、以前より話すようになった。
「檸檬、明日は?大学?」
「うん。そうだ、零も来てみる?」
「……??」
「大学だよ。出入りは自由だし。俺が講義の間、どこかで待っててくれればいいよ。」
零の交友関係を増やすことができれば、将来の幅を増やすことができるかもしれない。
そう思って提案したのだが、零は少し不安そうだ。
「嫌ならいいんだけど…。興味ない?」
「興味ないわけじゃなくて…」
「怖い?」
「………。」
零は頷いた。
今まで零がどんな人と、どんなふうに触れ合ってきたかなんて分からないけど、たしかに未知の世界に行くのは勇気がいることだ。
「じゃあさ、俺が講義ない日に、一緒に行く?」
「……?」
「俺の友達、紹介する。俺が講義がない日なら、ずっと零のそばにいられるし。」
「……!」
零は嬉しそうに目を輝かせた。
大学自体には興味はあるようだ。
それと、俺の友達。
悪い奴はいないから、零にも優しく接してくれると思う。
「じゃあ零のこと、軽く紹介しててもいい?」
「うん。」
「大人しくて可愛い子つったら、期待させるかな?」
「可愛くないよ…。」
「そう?零は可愛いと思うけど。」
俺がそう言うと、零は恥ずかしそうに俯いてしまった。
あんまり可愛いって言わない方がいいのか…?
この一週間で、零の接し方に慣れてきたと思ったけど、やっぱり対人間だからそう簡単にはいかないようだ。
「みんな歓迎してくれると思うよ。」
「本当…?」
「バイト先だって、みんな歓迎してくれただろ?そうだ、もうすぐうちのバーで零の歓迎会してくれるらしいよ。店長が珍しく。」
「ふふっ…」
零は嬉しそうに笑った。
バーを貸し切って歓迎会なんて初めてかもしれない。
普段はスタッフだけで勝手にやってろって、店長は我関せずで普段通り営業するから。
店長もきっと、零を特別に感じてくれているんだと思う。
零の過去がどんなだって、今を幸せに生きてほしいと思う。
これは俺たちの勝手な押し付けかもしれないけど。
それでも今こうやって、零が嬉しそうならそれでいいかと思う俺は、随分と零に入れ込んでしまってるのかもしれない。
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