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第15話

零と暮らし始めて、三週間が経った。 四六時中一緒にいたからか、零がいるのが当たり前の生活になりつつある。 「零、チーズ取って。」 「これ…?」 「サンキュ。ほれ、味見。」 「ん……、美味しい。」 今日はランチタイムにバイトして、今はキッチンでバイト先で教えてもらったおつまみを、零と一緒に作っている。 今から家で映画を観る予定だ。 大学の友人が零に喜んで欲しくて、いろいろ貢物をしてくる。 その中の一つで、おすすめの映画DVDを渡された。 そしてそれをゆっくり観るために、おつまみと酒を作っているわけだ。 零は未成年だから酒はやらねぇけど。 「よし、これでいいな。」 「ん…、檸檬、あっち。」 「わかってるって。……って、恋愛映画かよ。」 零に腕を引かれて、ベッドを背もたれに床に座る。 借りたDVDの表面を見ると、2年前くらいに大ヒットしたアイスバースをモデルにした恋愛映画だった。 「アイスバース…?」 「知らねぇ?なんか人間にはアイスとジュースがいて、結ばれたらアイスは消えちまうんだってよ。」 「………。」 「どこがハッピーエンドなのかわかんねぇよな。だって好きな相手が死ぬんだぞ?零ならどう思う?」 俺がそう聞くと、零は一瞬口籠った。 零なりに色々考えてんだろうな。 「悲しい………けど、その人に永遠に覚えていてもらえるなら、嬉しい。」 「え、おまえ消える方の視点なの?」 「わかんない……。なんか、直感でそう思った…。」 零は本当に不思議なやつだ。 大抵アイスバースを題材にした恋愛ものは、男がジュースで女がアイス。 だから無意識に俺はジュース視点でものを考えていたかもしれない。 でも零はアイスバース自体、知らなかったんだもんなぁ。 「俺が消える側だったらか。考えたことなかったな。……いや、でも消えたくねぇな。だってせっかく好きな人と結ばれて、幸せなのはこれからだろ?」 「溶けても、気持ちは残る…。」 「溶けられた方は絶望だろ。こういう映画は綺麗事なんだよ。」 「見る前にそんなこと言わないでよ…。」 「悪りぃ。」 部屋を暗くして映画を流す。 零はじっと静かに映画を観ていた。 俺はレモンサワー片手に、おつまみを食べながら映画を観る。 話題作だから、結末は人伝(ひとづて)に聞いた。 聞かなくてもわかる。 最後はアイスが溶けて消えてしまうんだ。

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