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第16話
映画のエンドロールが流れる。
分かっていたが、最後はアイスの女が溶けて消えた。
本当、こんな酷い恋愛で人の涙を誘おうなんて、クソみたいな設定だな。
と思っていたら、俺の真隣で零がグズグズ泣いていた。
「何泣いてんだよ…。」
「だって……、悲しい……。」
「こんなんフィクションなんだから、実際ねぇよ。」
「うっ…、檸檬〜……」
「泣くなって。」
抱きしめて背中をさすってやると、零は鼻をズビズビ言わせながら泣き止もうと頑張っていた。
出会って間もない頃は感情が分かりにくい奴だなと思っていたが、俺の前では笑ったり泣いたり怒ったり、割と表情に出るようになってきたと思う。
俺にだけこういう一面を見せてくれるのは、正直嬉しいし、男相手に変な話だが、独占欲のような感情が生まれてしまう。
「……グスッ………、ごめん。」
「泣き止んだ?」
「うん……。」
目を赤く腫らし、鼻かみすぎて鼻の下もほんのり赤い。
そんなに悲しかったか。
まぁ、あの手の映画は泣かせるために作っているし、感情移入しやすい人ほど影響を受けてしまうのだろう。
「もう寝る?」
「うん……。ねぇ、檸檬…。」
「何?」
「今日だけ、一緒に寝てもいい…?」
あんな綺麗な目に涙溜めてお願いされて、断れるわけがない。
俺は二つ返事で了承し、零は満足そうに俺のベッドへ入ってきた。
「檸檬、あったかい…。」
「零は相変わらず冷てぇな。」
「………。」
「もし本当にアイスバースがあったら、お前は間違いなくアイスだろうな。」
そう言うと、さっきまで嬉しそうだった零の表情は曇ってしまった。
冗談のつもりで言ったんだけどな…。
「悪りぃ、冗談……。」
「もし僕が、アイスだったらどうする…?」
「へ?」
「檸檬は……、どうする……?」
これは零なりの冗談なのか…?
冗談なら冗談とわかる表情や言い方をしてくれ…。
「零がアイスだったら、零の恋する相手がジュースじゃないように祈るしかないな。」
「僕に消えて欲しくないってこと…?」
「そりゃそうだろ。誰もお前に消えて欲しいなんて思ってねぇよ。」
「そう…かな……。」
「あぁ。少なくとも俺は思ってないけど。」
零はせっかく泣き止んだのに、今にも泣き出しそうな顔で俺の胸に顔を埋めた。
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