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第18話

一緒に眠ったあの日から、どうやら零の様子がおかしかった。 「零、なんで逃げる?」 「に、逃げてない…。」 「逃げてるだろ。」 俺が触れようとすると、零は露骨に逃げる。 初めは気のせいかと思ったが、数日続くとそれは確信に変わった。 問い詰めると、顔を逸らして、もじもじし始める。 「檸檬には分かんないよ…。」 「はぁ?何の話だよ。」 「こっちの話!」 頑なに教えてくれる気配はない。 こっちってどっちだよ……、ったく。 そうこうしている間にバイトの時間が近付き、俺と零は支度して家を出た。 「俺バイトの後、そのまま講義に行くから、零はまっすぐ家に帰れよ。」 「うん。」 「鍵、ちゃんと持ったか?」 「持ってるよ、ほら。」 零はレモンのキーホルダーが付いた鍵を自慢げに俺に見せた。 俺が渡した時は、ただの鍵だったんだけど。 「何、それ。」 「レモン。可愛いでしょ?」 「何でお前がレモン付けてんだよ。」 ブハッと笑うと、零は「いいじゃん。」と大切そうにそれを握った。 「じゃあ俺のこと、大事に持っとけよ。」 「ふぇ?!」 「レモン、俺の分身だと思って無くすなよ?それ大事に持ってりゃ、鍵も落とさねぇだろ。」 そう言うと、零はこくこくと頷いた。 予定通り、ランチタイム営業が終わった後、俺は大学へ向かい、零は家へ帰った。 大学に着き、友人にDVDを返す。 「あ、これどうだった?泣けたでしょ〜?」 「俺アイスバース好きじゃねぇんだよ。どこが運命なわけ?」 「はぁ〜?アイスとジュースは惹かれ合うんですー!両想いなのに恋が実った時に消えてしまう切なさっていうの?あーん、泣ける!」 「それがひでぇつってんだよ。」 女の感性が分からない。 いや、でもあいつも泣いてたな……。 「てか、檸檬の感想じゃなくて、零くんの感想が聞きたいんですけど!!」 「あいつは泣いてたよ。もう号泣。」 「あああああ可愛いいい!!!てか、ほらね。あんたの感性がおかしいんだよ。零くんはいい感性してるね。」 「何で俺のことさり気なくディスってんだよ。」 「檸檬は恋もしたことないから、分かんないんだよ。」 「恋したらあの良さが分かんの?」 「わかるわかる!私の友達で檸檬だけだよ、あの映画否定してるの。」 そんなもんなのか。 恋愛か……。 したくても、経験したことないからどんな感情かさえ未知だな…。 俺はため息をついて、その場を後にした。

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