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第22話
零の冷たい手を握って、俺は告 った。
「零、好きだ。」
言えた。
伝えた。
初めてで無茶苦茶で、何の飾り気もない俺の告白。
零はどう思うだろうか?
怖くて目が開けられなくて、やっと目を開けた時、零はぽろぽろと泣いていた。
それはとても幸せそうに。
頬を真っ赤に染めて、口を震わせて。
「零……、零、好きだ。」
「本当に…?夢じゃない……?」
この反応は、肯定と受け取っていいんだよな?
零も俺に想いを寄せてくれていたってこと?
「零。」
「檸檬…っ」
目を閉じる零の唇に口付けた。
幸せだ。嬉しい。
好きな人と結ばれるのは、こんなにも心が満たされることなんだ。
力いっぱいに抱き締めると、零も俺を抱きしめ返した。
けれど、俺の身体は不思議と濡れた。
おかしい。
今までみたいに零を抱きしめる感覚と違った。
目を開けると、目の前の零は溶け始めていた。
さっきまで俺と触れ合っていたはずの唇も。
まるで氷のようにぽたぽたと。
零の足元に、水溜まりが出来ていく。
「なに……これ……」
まさか。
嘘だ。
だってあれはフィクションじゃないか。
ただ昔、悪戯 に誰かが言い出した俗説だろ?
「檸檬…、檸檬…っ」
「零っ…?」
「…怖い……、身体が……溶けてく……」
俺の背中に回っていたはずの零の腕は溶けて消えた。
俺が抱きしめている零の身体も、みるみるうちに溶けて消えていく。
「零…っ、なんで……、零っ、零…っ!!」
「…檸…檬………」
「零、好きだ。……なぁ、どうして?零…っ」
「……檸檬……………」
「嘘だって言えよ…!零っ!」
「…………れ…も………ん……………」
「俺が迷惑って言うまで離れねぇって、約束したじゃねぇか…!」
ぽたぽた…
ぽたぽた………
溶けて、溶けて、消えていく。
俺の初めて愛した人が、目の前で。
「……ご…めん……ね………」
「零っ…!!」
「……檸…………檬……、ぼ…くも……」
零は幸せそうな顔で微笑みながら、俺の前から消えた。
残ったのは、びしょ濡れになった、零が気に入ってよく着ていた俺の服と、ほのかなレモンの匂い。
「意味……わかんねぇよ………。」
俺はその場で崩れ落ちる。
つい3分前まで目の前にいたはずの零は水になり、雪と同化した。
零は存在さえ不確かな"アイス"だった。
そして俺は、アイスを殺してしまう"ジュース"だったのだと、今更になって気づいたのだった。
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