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第5話 花のような(8/9)
ルスは、確かに今朝、俺を幸せにすると言ってくれた。
実直そうな眉で、真っ直ぐな瞳で、柔らかな笑みを浮かべて、俺にそう言ってくれた。
……けどさぁ、幸せにしてくれんの早過ぎねぇ?
俺もう幸せで死にそうなんだけど??
何だよ花束って。
いきなり初日からそんなん持って帰ってくるか?
しかもさ、俺の……俺のイメージカラーってさ……直球すぎねぇ??
なんかもう直球すぎて俺が恥ずかしいんだよ!!
いやまあ、ルスが花言葉だとかそんなん詳しいわけねぇしな。
分かるよ。
頭では分かってるよ。
でも心が追いつけてねーからっっ!!
その上なんだよ、叔母さんの応援付き!?
許可じゃなくて?? 応援!?
なんであの子の叔母さんが俺の事応援してくれんだよ、おかしいだろ?
俺恨まれたりする立ち位置じゃねーの??
結局俺、昨日からルスの前で泣くばっかだしさぁ。
ほんっっと何一ついいとこねーよなぁ。
……だからせめて、それは俺にも手伝わせてくれよ。
なんか泣き落としに近かった気がするけど、もう何でもいい。
とにかく今夜は、ルスが出なくなるまで帰さねーからなっ。
ベッドに寝かせようとしたら、ルスは、それじゃ俺が前屈みになるだろうと譲らなくて、結局俺達は横向きに寝て向かい合った。
なんかこれはこれで……、顔が近くて照れるな。
いや、落ち着け、俺は今まで女性達を昼だって夜だって華麗にリードしてきたじゃないか。
……っつっても違うんだよな。
俺に惚れてた彼女達と、俺が惚れてるルスじゃ、全っっ然違う。
俺をうっとり眺めてくれてた彼女達をリードする事は簡単だった。
けど、ルスの場合、俺の方がちょっと気を抜くとルスに見惚れてるからな。
……うん。やっぱ無理だわ。
だって今も俺、ルスの黒い瞳から目逸らせねーもんな。
俺の事、ルスが見ててくれるだけで、なんかもう俺幸せ過ぎて死ねるな……。
「レイ?」
優しい声。ちょっとだけ笑ったようなルスの気配。
次の瞬間、ルスは俺の額に口付けていた。
「あんまり見つめられたら照れてしまうだろう?」
「……っ」
照れていーよ! 俺、ルスの照れ顔もっと見たいし!!
ルスの唇がゆっくりおりてきて、俺の瞼に口付ける。
そっと離された唇に俺が瞼を開くと、ルスの黒い瞳が俺を見ている。
黒い瞳は俺をじっと見つめたまま、愛しげに細められた。
「お前の青い瞳は宝石のように美しいな。じっと見ていると、吸い込まれてしまいそうだ……」
「……お……っ、おまっっ……!!」
言葉はうまく出ないのに、俺の顔だけは正直に真っ赤になる。
そんな俺を見て、ルスはほんの少し照れ臭そうに、幸せそうに、微笑んだ。
っぁぁぁあああああ、何だよこれ!!
両思いっぽくねぇ!?
なぁ、ルスも俺のこと好きっぽくねぇ!?
いや、なんだ? 別に俺、ルスに好きじゃ無いとか言われてねぇよな??
好きだって言われてないだけだよな。
もしかして、結構脈あんじゃねぇ??
俺は高まる期待に背を押されるように、ルスに手を伸ばす。
ルスは、俺がその顎に指をかければこちらを見つめ、その顎を引いて俺が顔を近付ければ素直に目を閉じた。
俺はルスに受け入れられている。その事実が堪らなく嬉しい。
ルスの厚い唇を舌先でなぞり、その内へと舌を挿し入れると、ルスはそっと口を開いて応えた。
喜びに胸が震える。
内側へ迎え入れられるままに進むと、柔らかい舌がそっと絡み付いてきた。
ぞくりと背を這う甘い熱に、頭の芯が痺れる。
「……っ」
俺はルスの口内を余す事なく撫で上げる。
これらが全て、俺に許されていることに、この上ない喜びを感じながら。
ルスの舌を根元から丹念に舐め回すと、ルスが小さく息を漏らした。
「ん……」
……ルスの息が熱い。
俺を受け入れ、感じてくれるこの男が、俺は愛しくてたまらない。
腕を伸ばしてルスの股間に触れてみると、そこは緩やかに立ち上がっている。
そっと愛を込めて撫でれば、俺の愛撫に応えるようにルスの物は力を増した。
喜びに、俺が思わずにやけると、口を塞がれたままのルスがフッと鼻先で笑った。
「……なんだよ、にやけて悪かったな」
思わず、口を離して呟けば、ルスは俺を慈しむように見つめて言った。
「いや、お前は俺のが立つだけでそんなに嬉しいのかと思ってな」
不意に、ルスのあったかい手が、俺の股間を撫でる。
やわやわと揉み込むように触れられて、俺の物が力を増す。
ふ。とルスの笑った気配に顔を上げれば、黒い瞳が俺を見て微笑んだ。
「そうだな。悪くない気分だ」
「……っ、お、俺まで元気にしてどうすんだよっ」
「俺ばかりしてもらうのでは、不平等だろう」
その騎士の博愛と公平の精神は、こんな時に発揮するべきもんじゃねぇんだよ。と喉まで出かかった言葉を、俺は何とか飲み込む。少なくとも、俺がルスに入れるその日までは、その考え方でいてほしい。
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