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第6話◇遭遇2

「……ってそうだ、言うの忘れてた」 「何を?」 「先週の金曜さ、志樹さんがここに来たんだよ」 「は? 兄貴? 何で?」 「いや、たまたまらしい。つか、少し前にグルメナビみたいなサイトに登録したから、検索してきてくれる人も増えてんだよね。店長として写真のってんだけど、それ見て、似てるなって思ったんだって」 「祥太郎に最近会ったっけ、兄貴」 「働き出す前に、お前んち泊りに行った時が最後かなあ」 「……人の顔覚えんのほんと得意だからな、あの人……」 「すっげー緊張した、食事出すの」  そんな祥太郎の言葉に、苦笑い。 「それで、志樹さんが一緒に来た人がな」 「ああ」 「すげえキレイな人だった。まあ、イケメンっつーんだろうけど。なんか、キレイな人」 「――――……」 「蒼生の先輩ってこの人かなあって思ったんだけど。でもお前、笑わない人だっていうからさ。志樹さんと居た人はすごい笑う人だったし、じゃあ違うかなと思って」 「――――……」  まあ、あの人。他の奴と居る時は、笑うけど。  ――――……それを祥太郎には敢えて言ってねえから。  笑ってるから、先輩じゃない、ってことにはならない。  そんな、キレイなんて言われる男なんて、そんな周りにいないから、あの人だったんじゃねえのかな。なんて、思う。 「お前が先週来てたら、確認できたんだけどな」 「……何で兄貴が居酒屋なんてくんの?」 「なんてとか言うな。……なんか、まだ戻って仕事だったらしくてさ。上手い飯、で検索したら、ここが引っかかったんだって。すごくねえ? 志樹さんの検索にオレの店が引っかかるとか、すげえ嬉しいんだけど」 「……さっき怖いっていってたじゃねえかよ」 「いや、なんか、逆らったら怖いだろ絶対。と、思うから、逆らわないし。なんか、カッコいいし。志樹さん」 「はいはい」  まあ、我が兄ながら。  言いたい事は……分かるけど。 「また来てくれねーかなー」 「やだよ、オレの安らぎの場所に兄貴が通うとか、無い」 「勝手に安らぎの場所にすんな」  祥太郎がクスクス笑う。  その時、また来客を告げるチャイムが鳴って。  バイトの子が接客して。オレの後ろを通り過ぎる、時。 「――――蒼生?」  あー。この声。  ――――……絶対、兄貴……。  大きくため息をつきたい気分になりながら、振り返ると。  案の定、兄貴と。――――……陽斗先輩。 「いらっしゃいませ、志樹さん」  言った祥太郎に、笑って頷いて、それからオレを見下ろす。 「来てたんだな」 「兄貴こそ。 先週も来たらしいじゃん。今聞いてた」 「陽斗がこないだ食べて美味かったっていうから。また戻って仕事だから、近くて良いし。な?」 「うん」  兄貴の言葉に、先輩が頷く。 「こないだの席で良いか?」  兄貴が祥太郎に聞いて、もちろん、と答えて、祥太郎がバイトと接客を変わって、案内しに行く。  ――――……すごい笑ってたキレイな人って。  やっぱ、あの人か。  祥太郎の入れてくれたカクテルを、一気に煽る。  あー。なんか。  イライラするなー……。  カウンターの隅の方のテーブル席に2人を案内して、祥太郎がカウンターに戻ってきた。 「おお? もう飲んだの?」 「おかわり、祥太郎」 「うわ、お前、やべーな。――――……やっぱ、あの人なの?」 「そう。あの人。……ていうか、オレこんなので酔わねえし」 「まあ、強いのは知ってるけど。カクテル一気飲みしなくても良くねえ?」  祥太郎が苦笑いしてる。 「……はー……なるほどね」    空のグラスを片付けて、新しいのを作りながら、祥太郎がふー、と息をついた。 「……あの顔で冷たくされたら、へこむかも」 「――――……」 「あ、でも言ってたじゃん、指導されんの終わりになるかもって」 「……まあな」  この席。やたら、先輩が目に入ってくる。  兄貴と話してると、良く笑う。  ――――……だめだ。見えない方がいいな、これ。 「オレ、あいつらんとこ行ってくるわ」 「んー。これ持ってけ」 「サンキュ」  グラスを受け取って、後輩達のテーブルに近付く。 「蒼生さーん、遅いですよ」 「遅くねーだろ、すぐ来たわ」 「待ってましたもん」  陽斗先輩が見えない方に座って。  2人が食事を終えて出て行くのを待った。  

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