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第13話◇

「ていうかさ。よく、あんなんで、2年もオレについてきたよな?」  ――――……。  ……ていうか、ついてくしかなくねえ?  辞める訳にもいかないし。 「最初はさ、目つき悪いし態度も悪いし、無理なんじゃねーかなーと思ったんだけど……実際教え始めてみたら、頭良いし、仕事早いし、機転もきくし。さすが、志樹の弟だなーと思って」  目つきと態度が悪いのは、あんたの態度が悪いからだっつーの……。  この人、何?て、ずっと、思ってたし。  でも、仕事はきっちり教えてくれるから、もう割り切って覚えようと思ったっつーか。 「……よく、そんな理由でずっとあんな態度取り続けられましたね」 「あ。……超恨んでる感じだな」  先輩は、この上なく、苦笑い。 「……つーかさ、途中でもう志樹からOK出ないってのが分かってからは、全部お前の為だと思おうとしてたから……」 「――――……」  はー、とため息を吐くオレに、先輩はんー、とまた苦笑いを浮かべて。 「もしかして少しは褒めて欲しかった?」  クス、と笑う。 「つか、あんた、オレのこと、すげえ冷たい目で見たじゃん」 「だって、頑張ってて偉いなーとか思っちゃったら、オレ絶対褒めるに決まってるし。それだけはやめてって言われてたからさ。ていうか、冷たい目で見てたつもりはないよ、笑わないようにしてただけ。あー……気にしてた? ごめんな?」  クスクス笑われると、すげえキレイな顔が、可愛く――――……。  ……いやいや、何言ってんだ、オレ。 「でもなんか、三上って、全然平気な顔して、普通にしてるから、そんなに嫌がってんの、分かんなかった……ごめん、ちょっとお前は平気なのかなって、思っちゃってたよ。 志樹が、メンタル強ぇから絶対大丈夫とか言うしさ……」 「――――……」  まあ、他の奴よりメンタル強いってのは認めるけど。   でも、相当、先輩にされんのは、嫌だったけど。    …………なんか。  理解、してきたら。  この人のムカつく態度が、全部、そのためだったとか、嫌々ながら、納得してきたら。  ――――……なんか。 「まだまだ教える事たくさんあるからさ。あ、さっき、志樹に確認したら、まだお前、オレの下につけたままにするって。だから、仕事はスパルタではいくけど。――――……こっからは、もう普通に接するから」 「――――……」 「褒めるけど、気ぃ緩めんなよな? 緩めたら、オレ、元に戻るからな」 「……っ……緩めませんよ」  何だかもう悔しいやらムカつくやら。  ……嫌われてたんじゃなくて良かった、やら。  もう何だか良く分からない。  ほんと、なんだこれ。  2年も、ずっとあんな感じで接してきて。仕事終わらせれば、速攻また違う仕事教えられて。全然話もせず……。笑わず目も合わせず……。  ああ、でも、教え方は、すげえ分かりやすくて、丁寧だったな。ミスしても責められることはなかった。  完全にオレのミスで問題になった時も、教育係のオレの責任だって、全部かぶってくれたし。……だから、嫌われてるのかも良く分からないまま、悩みながら来たんだっけ……。  で、訳が分かんないから、オレは、この人が嫌いだって、ずっと……。 「今もすげえ怒ってる?」 「――――……もう良いですよ……」  半分投げやりに言ったのだけれど。  先輩は、ふ、と笑った。  ――――……なんか。  オレ、先輩のこと、気に食わなかった反動で。  …………今、すげえ…… いや、ちょっと……嬉しいかも。  ……何これ、やばくね?  あんた、ばらしたからって、笑顔すぎだし。

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