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第17話◇
あの後、工場を見に行ったは良いけど。
ひたすら邪魔してるのに、ほんと、あいつ、しつこすぎて。
どーにか2人になろうとしやがるし、この人何の疑いも持たないし。
もう思い切り、「先輩についてかないと何もできない後輩」風に張り付いた。
この後、ご飯でもどう?と先輩に言ってきやがったのも、「いいですね、せっかくだし」とか普通に受けようとしているし。しかも、どう聞いてても、2人で、という誘いだったし。昔の話とかしながら京都の美味しい店につれていってあげよう、的な。
もう最後は、オレは急な体調不良作戦を実行して、先輩も帰らせる方向にもってく事にした。とりあえず、京都の奴だし、ここさえクリアすれば、もうどうでもいいと思ったから。
あれが、東京の奴でこれからも先輩に絡むつもりなら、どんな力を総動員してでも、先輩の近くから、排除するところだが。
新幹線で2時間もかかるとこに居る奴だし、今そこまでしなくてもいいかと思い、何とか、具合悪くなってすみません風を最後まで装って、先輩を守るミッションを完遂した。
奴は渋々だったが、先輩は、具合悪いオレをひとりにはできないからと、やっと断って、ようやく帰る事になり、迎えに来たタクシーに乗り込んだ。
ぐったり見せていたオレは、奴が見えなくなってから、深いため息とともに姿勢を直し、天を仰いだ。
「――――……?? 三上?」
「――――……はー……。」
「……三上、何か、怒ってる?」
「……別に怒ってないですけど」
もう一度、深いため息をくと、先輩が、なんだよ?と苦笑いしてる。
「……先輩さ、こういっちゃ、何なんですけど――――……」
「うん?」
「……バカ、なんですか?」
「――――……は?」
先輩、さすがに、後輩からのいきなりのバカ発言に、ぽかん、として。
その真意を測ろうと、首を傾げてオレを見つめてくる。
「……どー見たって、あやしく2人きりになろうとしてんの、気づかないんですか?」
「……あやしく2人きりって……」
ぷ、と先輩が笑う。
「三上何言ってんの? つかお前、具合悪いのは平気なのか?」
「――――……っ」
ああ、もー……。
「仮病ですよ。オレ、すげえ元気です」
「……ん??」
きょとん、として、先輩がオレを見つめる。
「そうでもしねーと、あいつと夕飯行くとこだったでしょうが」
「――――……え、なんでそんな、嫌がってんの?」
タクシーの運ちゃんが居るので、そこまでは言いたくない。
「後で話します。……とりあえず、飯食うとこ、決めてください」
「……なんか、そういう、意味わかんない事言う感じ、なんか志樹に似てるなー? そんなとこ、似てるとか、変なの……」
……似てるとか、変なのとか、言われたくない。
変なのは、あんただ。
――――……つか、兄貴も、この人のこういうので、もしかして、苦労した経験あり??
……てことは、この人って、結構そうやって狙われるって事か?
「てか、ごめん、オレ車でスマホ見れない」
……そっか、酔うんだっけ。
……なんか可愛いな。 こんなキレイなのに子供みたいな……。
――――…………だから……オレ!いい加減にしろ。
「……じゃあオレ調べます。何食べたいですか?」
「三上は?」
……絶対そう聞くと思った。
「オレ、なんでも良いんで」
「じゃあ……湯葉とか豆腐料理とか。そう言うのがいい」
「あーいいですね。美味そう」
「あと美味しい酒が飲めるとこ」
ふふ、と嬉しそうに笑う。
「……了解です」
検索して、色々探しながら。
――――……とりあえず、守るミッションは終えたし。
オレの仕事は、終了。
ほっとしたら、思うのは。
もう完全に、何のわだかまりもなく、楽しそうに微笑むのを。
見てるこっちが、まだ動揺しまくってて。
……なんか。
ほんっとに。
嬉しそうに笑うのとか、勘弁してほしい。
テーブル席だと向かい合っちまうから、カウンターにしようかな。
それなら、顔見なくても済むし。
意味の分からない理由で、カウンターのある店を探してしまう自分。
なんかもうあのキモイオッサンの相手してる時から、蹴り倒したいのすげえ我慢してたし。
今もすげえモヤモヤするし。
――――……なんか、どっちにしても、この人の側に居ると、モヤモヤするってことなのか?
タクシーの中は静かなので。
気付かれないように、静かに、長いため息を、ついた。
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