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第21話初・プライベートで買い物
結構酔ってて、すごく楽しそうな先輩と店を出て、駅ビルの服飾店に、明日用の下着を買いに寄ったら。
先輩が、明日私服で観光しようぜ? と言うから、結局、洋服まで一揃い、買う事になった。
「三上、これも、似合いそう。いやーでも、こっちかなあ」
先輩が超楽しそうにオレの服を選び、体に当てて、んー、と考えてる。
「オレ普段、黒っぽいのしか着ないんですけど」
「えーじゃあこっちの白にしよう? 春だし!」
「――――……」
有無を言わせない感じで、白のニットを渡された。
「いらっしゃいませ」
店員が寄ってきて、先輩と話し始める。
「白も似合いますよね? なんか黒しか着ないとか言ってるんですけど」
そう言いながら、オレの前に服を合わせる。
「ええ、とてもお似合いですよ?」
そりゃ似合わないとは言わねえだろ。
とは思うのだけれど。
「……変じゃないですか?」
「変? …ていうか、三上に黒のイメージが無いから、全然何も思わない。普通にカッコいいよ」
「――――……じゃもうこれでいいです」
思い起こす限り、人生で、白のニットとか。
……着た事ねえんだけど。
もう逆らう気もせず、白のニットとそれに合うジーンズと、下着と靴下。革靴で歩きたくないからスリッポンまで、全部セットで購入決定。で、陽斗先輩はと言うと。
「お前のはオレが選んだんだから、オレのはお前が選んで」
とか言ってる。
人の服選ぶとか、なかなか無い。しかも男のって。
でも正直、めっちゃキレイだし、何着ても似合うと思うんだけど……。
なんかもう。
ニコニコ楽しそうにオレを見上げてくる先輩に。ため息しか出てこない。
並んで歩くとか、今までも、社内でも、営業先とかでもよくあったのに。
こんなに近距離で、しかも、見上げてくるとかは、全然なかったから。
今までは、距離があったし、まったく視線は向いてこなかったっつー状態からの、これだから……。
見上げられるのとか、すげえ、心臓に良くない。
なんなんだこの人。
もともと、他の奴とは仲良いし、距離近いなと思ってたけど。
……これで、周りの皆と接してんのか?
――――……もう少し、警戒しろよ。
だからさっきのおっさんみたいな、勘違いする奴が現れるんじゃねえの??
とか、色々思う事があり。
かなりムカムカしていると。
「それってさっきの三上のだろ? 何? ペアルックにしたいの?」
何も考えず、ただオレが手に触れてた服を覗き込んだ先輩が、クスクス笑いながら、オレを見上げてくる。
「は?」
自分が手に触れてた服を見て、先輩の言ってた事を理解して、思わず、ぱっと手を離す。
「つか、んな訳ねーだろ」
……あ。しまった。
普通に突っ込んでしまった。
一瞬じっとオレを見た先輩が、ぷ、と笑い出した。
「だよなー? さすがにペアルックは恥ずかしいなあ」
クスクス笑われて、「……だから、しようと思ってないですって」と力なく言ってると、店員までが隣で笑ってる。
もう、深く。ため息。
なんか。
ペース、狂いっぱなし。
もう絶対、今のオレを、
長い付き合いの祥太郎とか、その他の仲間とか、後輩たちとか、
特に兄貴とか、
絶対に、見せたくないって位。
普段自分がどう喋っているのかすら、見失ってる気がする。
「三上、ちゃんと選んでよ?」
……男の服、選ぶとか。
…………とりあえず普段、絶対やんねえけど。
「選んでますよ……」
ため息をつきながらではあるけれど、ついつい、これ似合いそうとか。こっちも似合いそうとか。考えてる自分に、ちょっと眩暈が起きそう……。
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