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第25話◇
何とか、話を思い出して、会話を続ける。
「他で見つけりゃいいだろ、後々色々面倒だから、手近な所で済ませるなよって、入社する前にめちゃめちゃ言われました」
「そんないいつけ、守るんだなー?」
クスクス笑って、オレを振り返ってくる。
……オレは、先輩を見ないままで。
「まあ……すっごい好きな女が出来て結婚したいとかなら、場合によったら許すとは言われたんですよね。本気ならいいって事だったんで、まあ、一応聞いときましたけど」
「本気になるような子は、居ないんだ?」
「……まあ、今んとこは」
「ふうん。そうなんだ。――――……な、三上も見てみなよ、すごい、下、綺麗だから」
見てみなよって。 それを見るには、先輩と、窓の所に並ばないといけないのだけど。――――……まあ、並んじゃった方が、先輩の事は見えなくていいか。
少し移動して、先輩の隣に膝立ちして、下の庭園を見下ろす。
ライトアップされた緑を上から見るのって。
確かに、綺麗。
「あとで、散歩に行きたいなー」
「いいですよ。飲む前?」
「飲んで、酔い覚ましに行こっか」
「了解です」
くる、とまた向きを戻して、先輩が湯船にまた浸かる。
また少し離れて、オレも温泉に浸かった。
「……先輩は、彼女、居ないんですか?」
「うん」
「何で? すっげえモテそうだけど」
「んーまあ……モテるけどね。合コンとか行くと、狙われてヤバいけど」
「……そうでしょうね」
女の子達の気持ち、分かるけど。
「どれくらい居ないんですか?」
「2年……3年弱かなあ……?」
「結構居ないんですね? ……先輩って、一晩限りでとか、そーいう付き合いって、しますか?」
「昔はあったけど……今はないなー……」
「――――……」
……てことは。
たまったら、1人でするのか。
――――……って。
想像すんな、バカ。
ダメだ、今、何話しても、どこ見ても、
やばい想像にしか、いかない。
「……そろそろ出ませんか?」
「つか、三上は来たばっかりじゃん。も少し入ってたら? オレ、先出るから、ゆっくりしてきていーよ」
そんな事を言って、急に立ち上がる。
――――……っ。
思い切り、裸の後ろ姿、見てしまった。
何で急に立つかな……っっ!
…………違う、急に立った先輩は、別に悪くない。
だから、なんでオレは、男の裸見て、
狼狽えてんだ。
つーか。
……とりあえず、深呼吸しよう。
水飲もう。
まず、シャワーを浴びてる先輩から、目を逸らそう。
ああ、もう――――……。
ダメだ、オレ。
考えてる事が、もう――――……。
狼狽えすぎて、どうにもできない。
「出てるね、三上」
「――――……はい」
ダメだ。
――――……たち、そう、だった。
……かろうじて、堪えたけど。
マジで、オレ、何なの。
男、対象なのか? ……いや、基本的に、オレ、男は対象じゃねえな。
……男、じゃなくて。
――――……先輩が、好きなのか……?
ああもう、どっちにしろ、ヤバいことに変わりはない。
長いなー、まだ、これから一晩と。明日の観光……。
違う意味で、早く帰りたくなってきた。
何か、やらかす、前に。
兄貴の友達だし、ヤバいの分かってるから、オレ、やらかしはしないと、思うんだけど。
……なんか、自信が、無くなってくる……。
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