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第31話◇

 先輩のって、どんな秘密なんだろ。  聞いてもいいのか?  ……ってもなあ。  ……人って、全部の事を、他人に話して生きてる訳じゃない。  秘密というくくりに入れずに、誰にも言ってない事なんて、山ほどあるはず。 敢えてそれを「秘密」にするのは、やっぱり、言いたくない、知られたくない、と、強く思うから、て事で。  聞かない方がいいよな……。  オレが族の総長だったって話は、族の奴らは当然だけど、あの頃の喧嘩相手のチームとかも含め、かなりの奴らが知ってる訳で。  オレの名前も、あの頃の族関連に関わる奴なら全員知ってるっつー話で。  ……そう考えると、秘密でもなんでもないのかも。  ただ、族に関係ない奴に知られて、退かれても面倒だし。  だから高校も大学も、普通の友達らには言ってない。聞かれたら隠しはしなかったと思うけど、幸い誰にも聞かれもしなかった。  で、やっぱり、会社関連の人には、さすがに知られない方が良いだろうと思い、そこは、隠そうとは思っているが。かなりの昔話だし、な。聞かれる事も無いだろうし、敢えて言わなければ、誰にも気づかれる可能性すら無い。  秘密、というか。  あえて言わないこと、の方に入んのかなー、オレのは。  別に最悪、言っても良いし。  先輩のも、そっちだったら、聞けば教えてくれんのかな? 「先輩の秘密って、先輩以外、知らないんですか?」 「……うん、知らない」  あー。  ……じゃあだめなやつかな? 「それって、オレが聞いても良いやつですか?」 「んー?……あー……うーん……ダメ、かなあ……」  ダメ、…………かなあ……??  うーん。  良く分かんねえ。  もうなんか、完全に酔っぱらってるのか、喋りがひたすらゆっくりで。  相当可愛くなっちまってるし。  はー。だめだなこれ。  聞いて欲しいのか、欲しくないかも、良く分からない。 「じゃあ、オレの秘密、先に話します」 「……それは、良いの?」 「だからオレのは、あの店に行ったら、すぐバレるやつなんで」 「……そうなんだ」 「オレの話聞いて、先輩も話そうかなって思ったら、話してください。 だめならいいんで」 「……ん」  先輩が頷いて、そのままじっとオレの言葉を待ってる。 「オレ、高校ん時」 「うん」  2人きりの部屋なんだから、声を小さくする必要なんかないのだが、  何となく、少し小声で話し始めたオレに。  何でか、先輩まで小声になって、何ならちょっと寄って来ようとしてる。 「……暴走族に入ってたんです」 「――――……」  先輩、きょとん、とした顔になって、じー、と見つめてくる。 「……総長でした」 「――――……え。総長?」 「はい」 「総長って、あれ? 一番偉い奴?」 「偉い……んー、うちのチームでは、一番、強い奴。だったかも」 「――――……」  先輩、目がパチパチしてるし。 「引いてますか??」 「いや。……高校ん時だろ? もう、ずいぶん前の話だし――――…… でも、ちょっとびっくり。ていうか、かなりびっくり」  そう言った後、数秒沈黙してから。  ふーん、そうなんだー、総長かー。  ちょっと、質問考えさせて。  そんな風に言って、なんか、ものすごく楽しそうな顔をしながら、オレを見つめてくる。  なんでこんな楽しそうかな。  予想外の反応。  苦笑いが浮かんでしまう。    

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