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第32話◇

 何聞かれるんだろう、と思って、ちょっと楽しみだった。  何聞きたくて、そんなにわくわくしてるんだろうと。  そしたら。 「写真無いの? 見たい」  と来た。  うわ、最悪。絶対ぇやだ。  咄嗟に思った。 「……やですよ、それは。質問なら答えますよ」 「えー、すっごい興味あるのに……」  それきり黙る。  …………ダメだ。オレこの人に弱すぎる。 「…………でもオレ携帯替えてるしわざわざ写真移してはないんで……。ちょっと誰かに聞いてみますね」 「うん」  めっちゃワクワクして、頷いてるのを見ながら、テーブルに置いてたスマホで、族の皆とつながってるグループに、「あの頃の写真すぐ送れる奴いる? もし居たら今すぐ送って」と入れてみた。 「……返事来なかったら諦めて下さいね」  むしろ、来なくていい。それなら諦めてくれるだろうし。 「うん分かった。なあ、強いって、喧嘩がってこと?」 「……あの居酒屋の祥太郎と2人で、総長と副長だったんです。それまで知らなかったんですけど闘ってみたら、オレらもともと強かったみたいで、負け知らずで、上に可愛がられてる内に、引き継いだって感じです」 「へえー。そうなんだー。いいな、楽しそう」 「……楽しそう?」 「オレ喧嘩なんかした事ないから」 「……あぁ。普通無いですよね。オレだって、族以外の場所で殴り合いなんてした事ないです」 「ふーん……族かあ。総長かー……」  言ったきり、じー、とオレを見つめる。 「何すか?」 「……なんか分かるかも。静かに肝が据わってる感じ、それかーて……」 「……そうですか?」 「そりゃオレが態度悪くても、メンタル強いから平気って、志樹、言うよなー……族のリーダーかー……」  クスクス笑う先輩は。なんかふにゃふにゃしてて。  少し首を傾げて、オレを見つめて、笑う。 「そりゃ動じないよな…… なんか、納得」 「……あのさ、先輩」 「んー?」 「――――……オレ、動じてないように見せてたけど、内心、すげえ嫌でしたからね」 「――――……」  つい、言ってしまった。  先輩酔ってるし。言っても平気かなと思って。どんな反応が来るのかなと。 「あんたと話したかったし。オレには、笑わねーし」 「――――……」 「2年間――――……嫌いだって思おうとしてたけど。そうもなりきれなくて、めっちゃ嫌、でしたからね」  思わず全部言い切ってしまうと。  先輩は。  ふわふわ、と笑って。   「はは。――――……三上、かーわいい……」  そんな風に言いながら、酔いを持て余しているのか。  少しだるそうに、テーブルに肘をついて、頬をのせて。  オレを見つめて、目を細める。  少し前かがみになるから、少し着崩してる浴衣が、更に開いて胸元が。    ――――……っ。  思わず視線を外したその時、スマホがぴこん、と鳴った。  開くと、あの頃の写真が並ぶ。思わず眉が寄る。  うわ……これ、見せんのか、先輩に。  …………厳選してからにしよ。見せてもよさそうなのだけ保存して、そっちで……と思ってるそばから、他の奴からもどんどん送られてくる。  おいおい、皆自分のスマホにこれ保存してんの?  もうあれから随分経つし、かなりの奴がスマホ買い替えてると思うのに。  山ほど並んでく写真に、ありがともう十分、と送った。  それでも、これだけはとか言いながら、ぴこぴこ送られてくる。皆から、懐かしいだの、総長カッコいい!だのめっちゃ並ぶ。  最近このグルーフ、動いて無かったから、きっと皆久しぶりで盛り上がってしまったらしい。  ため息が漏れてしまう。

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