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第33話◇

 もういいと入れたのに、次々入ってくる写真たちに眉を顰めつつ。  とりあえずマシなの保存して……。  と、思った瞬間。 「写真来た?」  先輩が、めっちゃ近くで、オレのスマホを覗き込んできた。 「――――……っ」  ……ち、かい、っつーの。  ドキン、と大きく弾んだ心臓。  ほんと勘弁して。 「見せて?」  クスクス笑う先輩の、綺麗な笑みに。  ――――……もう脱力。 「……はい」  もうスマホごと、渡してしまう。   離れてほしくて。  オレがこのままスマホ持ってたら、絶対このまま覗き込まれそうで。 「うわー。特攻服ー?」 「……そーです」  少し離れさせることに成功してホッとしていると、楽しそうに笑いながら見せてくる写真に、脱力しながら適当に答え続ける。 「集合写真すごいなー強烈」 「……ああ、それは、オレと祥太郎の代が卒業する時に撮った写真で」 「へー」  クスクス笑いながら、先輩が写真を見てる。 「お前の周り、女の子ばっかだな」 「……男の方が多くないですか?」 「男としゃべってるけど、その周り取り巻いてるのは女の子達だなーって思って」 「まあ。……総長っていうだけでモテる世界なんで」 「ふーん……」  なんて言いながら、先輩は写真をめくりながら。 「まあ、カッコいいしな、お前」 「……そうですか?」  良かった、もうマシなの選んでる余裕も無く、全部そのまま見せてしまったけど、その反応で。 「三上」 「はい?」 「――――……さっきさ」 「はい」 「……平気に見せてたけど、嫌だったって言ったろ?」 「……まあ」 「――――……ごめんな?」 「でもそれ、兄貴のせいだし。先輩はもう良いですよ」 「……でもなー。やっぱり嫌だったったって聞くと……んー……そりゃそうだよなーって……」 「すみません。でも、仕事はすごい丁寧に教えてくれてたし。なんか……そうじゃなくて――――…… 違くて」 「……違くて?」  何て言ったらいいんだろう。  嫌われているのかと思いながらも、そうも思えなくて。なんか、全然意味が分からなくてモヤモヤして嫌だっただけで。あとは――――…… オレ以外への嫉妬と言うか。  これ、なんて言ったら、分かってもらえるんだ?  意味が分からなくて嫌だったけど、意味が分かった今となってはもう、納得したというか。何て言ったらいいんだろう。   「だから――――……オレが、先輩と仲良くしたかった、ていう恨み言をちょっと言っておきたくなっただけで……」  あ。何かオレ、ちょっと。いや、大分、間違ってねえか?  なんか。ほんと、何言ってんだか分かんなくなる。  案の定、先輩が、ん?と言う顔で、ちょっと、きょとんとしている。  それから、ふ、と笑う。 「――――……だから。何その可愛いの。さっきも可愛かったけど」  いつまでも、クスクス笑う、先輩。  可愛いてなんだ。    ていうか、オレじゃなくて、先輩が可愛いし。  綺麗なのに、そんな風にふわふわ笑ってると、すげえ、可愛いとか。  ……絶対、ズルい。 「2年もほんと長かったよな。まあオレにとっても長かったけど……オレは全部分かってて自分がやってた事だから――――……」 「だからオレ、もう先輩には何も思ってないですって。すみません、平気だったわけじゃないですから、この先はしないでくださいねって言うか……」 「しないよ」 「ならいいです」  言うと先輩は、くす、と笑う。 「じゃあさ、なんか願いごとある? お詫びにいっこ聞くよ」 「――――……」 「あ。すっごい高い物とかダメな? オレにかなえられる位の適度な奴で」  ……うん。  ――――……ヤバい方の願い事しか、浮かばねえな。 「だから、もういいですって。良いですよ、お詫びなんて」  自分のヤバい思考を振り切るためにも、即、そう言って遠慮しといた。

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